山本祐司(やまもと・ゆうじ)/応用生物科学部教授。食品機能の研究などを専門とし、がん抑制のメカニズム解析にも取り組む(写真:本人提供)
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山本祐司(やまもと・ゆうじ)/応用生物科学部教授。食品機能の研究などを専門とし、がん抑制のメカニズム解析にも取り組む(写真:本人提供)
通常のラットと、過食で肥満状態になったラットを用いて実験。肥満状態になったラットは3グループに分け、標準のエサ、炭水化物をα化白米に置き換えたエサ、α化玄米に置き換えたエサをそれぞれ与えた。摂取したエネルギー量はどのグループも同じ(AERA 2018年11月19日号より)
通常のラットと、過食で肥満状態になったラットを用いて実験。肥満状態になったラットは3グループに分け、標準のエサ、炭水化物をα化白米に置き換えたエサ、α化玄米に置き換えたエサをそれぞれ与えた。摂取したエネルギー量はどのグループも同じ(AERA 2018年11月19日号より)

 米が、様々な生活習慣病の原因となるコレステロールを抑えてくれる。そんな研究結果を発表したのは、東京農業大学の山本祐司教授(52)だ。

【ラットでの実験結果】白米・玄米を食べるとコレステロールに驚きの変化が!

「米を食べることで高コレステロール状態を改善できることがわかりました」

 山本教授らのグループは、通常のラットと、過食で肥満状態になったラットを用いて実験した。肥満状態になったラットは3グループに分け、(1)標準のエサ、(2)炭水化物をα化白米に置き換えたエサ、(3)α化玄米に置き換えたエサをそれぞれ与えた。摂取したエネルギー量はどのグループも同じだ。

 グラフは、100日後の肝臓の総コレステロール濃度を示したものだ。白米・玄米を食べたグループは、コレステロール値がはっきりと低いことがわかる。

「これはまだ発表していませんが、過食で脂肪肝を発症していた肥満ラットの肝臓を調べたところ、白米食でも玄米食でも、肝臓にたまった脂肪が劇的に減ることも確認できました」

 ヒトを対象とした介入実験でも近い効果が表れている。

「健常な人と脂肪肝の人に、90日間玄米を食べ続けてもらいました。健常な人のコレステロール値には変化がありませんでしたが、脂肪肝の人はコレステロール値が下がり、炎症を表すマーカー値も低くなりました。脂肪肝が改善されていると推測できます。ラットでの実験結果を考えると、玄米ではなく白米でも、十分意味があるといえるでしょう」

 高コレステロール血症は動脈硬化疾患の大きなリスクになるし、脂肪肝は肝がんの原因にもなる。

「米は、そんな人におすすめの健康食と言えます」

 山本教授が力をこめるのは、この効果が特定の成分ではなく、米という食材を丸ごと食べることで得られるという点だ。

「コレステロール値を下げる要因は複合的です。コレステロールの再吸収を抑制したり、代謝遺伝子を活性化させたり。ですから、この効果は米の中の特定の成分を抽出して得られるものではありません。お米を炊いて、全体として食べることで効果が期待できるんです」

 サプリメントより、ご飯だ。(編集部・川口穣)

AERA 2018年11月19日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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