最近この国は変だ。皆がバラバラになっていて、私が他所者になれない。全てが在野化したのか、はたまた、小さな「内」が無数に存在し過ぎているのか。そうこうしているうちに、安倍政権があまりに大きい力を持っていたりする。公がとてつもない下品な不正を働く。そして、それを本来在野であるはずの報道機関がツッコミきれない。それどころか、大きな力に抱え込まれていたりする。一方、オンライン上で緩く連帯した無責任な言説たちが、先生のいない教室のように暴れ出す。まともな客観は排除されて、都合の良い主観のみが採用、幼稚な「内」と「内」とが手を繋ぐ。

 スローガンとして「多様化」が尊ばれる世の中だ。しかし誰も、多様化は複雑であり、ストレスだと教えない。甘い言葉で言い包めようとするのか。冷静にジャッジされる前に「簡単」「単純」「わかりやすい」が、脊髄反射の情動となってのさばっていく。

 私は唯一の在野としてこの国にツッコんでいくことにした。この国の「内」と「内」とを越境しながら。

『越境芸人』は、そんなことを綴った本になっている。

 先に言っておこう、「お買い上げありがとうございます」。

※AERA 2018年11月12日号

暮らしとモノ班 for promotion
2024年この本が読みたい!「本屋大賞」「芥川賞」「直木賞」