実りの秋、おいしい新米の季節がやってきた! おいしい米を私たちに届けるため、生産者はどのような工夫をしているのか? 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』が、茨城県龍ケ崎市にある横田農場を訪ねた。

【多品種】最も収穫が早い「あきたこまち」の稲刈りの様子。今年は猛暑の影響で、10日ほど早まった(撮影/遠藤潤、協力/横田農場)
【多品種】最も収穫が早い「あきたこまち」の稲刈りの様子。今年は猛暑の影響で、10日ほど早まった(撮影/遠藤潤、協力/横田農場)
【IT化】水位調節は米づくりで最も重要。大学との共同研究で取り付けている水田センサーでデータを取り、クラウド上で管理する(撮影/遠藤潤、協力/横田農場)
【IT化】水位調節は米づくりで最も重要。大学との共同研究で取り付けている水田センサーでデータを取り、クラウド上で管理する(撮影/遠藤潤、協力/横田農場)
【田んぼの学校】毎年、田植えと稲刈りの時期に行われる「田んぼの学校」(撮影/遠藤潤、協力/横田農場)
【田んぼの学校】毎年、田植えと稲刈りの時期に行われる「田んぼの学校」(撮影/遠藤潤、協力/横田農場)
【米粉スイーツ】横田農場の米100%の米粉でつくった「米粉シフォンケーキ」(右)と「おこめてんしロール」。小麦粉に比べて低カロリーで、しっとりとした食感に(撮影/遠藤潤、協力/横田農場)
【米粉スイーツ】横田農場の米100%の米粉でつくった「米粉シフォンケーキ」(右)と「おこめてんしロール」。小麦粉に比べて低カロリーで、しっとりとした食感に(撮影/遠藤潤、協力/横田農場)

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■ムダを省いて作業効率を上げる

 1996年に両親が始めた当時は16ヘクタールだった田んぼの面積ですが、高齢になった周辺の農家さんから借りる農地が年々増え、今では142ヘクタール(東京ドーム約30個分)まで大きくなりました。大規模な水田を経営するにあたって、私たちはさまざまな工夫をしています。その一つが「作業の効率をよくして、経費(費用)を削減すること」です。

 日本の稲作はとても高度に機械化されていますが、コンバインなど機械の経費の負担がとても大きい。そこで横田農場では、1台の機械ですべての農地をまかなうために、作付けの早い品種から遅い品種まで8品種を育てて、作業の時期を分散させるのです。

 また、8品種もつくると、同時にいろんな作業が必要になり、紙の台帳で管理するにも限界があります。そこでITの技術が役立ちます。過去の作業実績から今年の作業計画を立てたり、天気や生育状況によってそれを調整したり。すべてのデータをクラウド上に集約させているので、田んぼではスマホを使ってチェックすることもできるのです。

■お客さんの感想が目標になる

 以前は農協や卸売業者に出荷していましたが、98年ごろからインターネットや地元のスーパーで直売を始めました。直売を始めてよかったのは、お客さんの感想がじかに聞けること。あの人のためにおいしい米をつくろうという思いは目標になります。

 また、お菓子づくりが得意な妻は、米粉スイーツの製造、販売をしています。米にそれほど関心がない人にも頻繁に直売所に立ち寄ってもらえるようになり、幅広くお客さんとの接点を増やすことができています。

■自分のやり方でチャレンジする時代

 米農家として、多くの子どもたちに米を好きになってほしいし、関心を持ってもらいたいと願っています。そこで横田農場では毎年、「田んぼの学校」という取り組みをしています。子どもたちに実際に米づくり体験を通じて、田んぼのおもしろさ、米のおいしさを知ってもらうことも、私たち農家の役割だと思っています。

 日本の米づくりは歴史的にさまざまな制度で国に大切に守られてきました。米農家はそれに頼ってきた部分も大きいと思います。

 こうした制度が時代とともに変わり、これからはより自由度が高くなります。農家がしっかり考えを持って、自分なりのやり方でチャレンジしていく時代です。正解がないからこそ、農業はもっとおもしろくなっていくでしょう。

※月刊ジュニアエラ 2018年11月号より

ジュニアエラ 2018年 11 月号 [雑誌]

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AERA編集部
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