いつも書くように、これは米国社会がダイレクトに変化しているということでもあります。IT大手が生み出すツールにより大量の失業者が発生しようとしています。就業者数が変わらなくても実際の収入は激減する可能性があります。まだ目立ちませんが、雇用統計が好調な一方で、賃金上昇が鈍いのは間違いなくこれが原因です。

 例えばアマゾンの無人店舗はまだ実験段階ですが、もしすべてのレジが無人化されればレジ係として雇われている340万人(全米の労働者の2.6%相当)の雇用が失われます。AIが多くの仕事をこなすようになれば、あなたが優秀な人材なら世界中の企業が奪い合って賃金がうなぎのぼり。もし「十人並み」ならば世界中の人と職を奪い合わざるを得ず、賃金は下がり続けるはずです。

 リーマン・ショックは再来しません。来るとすれば史上初の大失業時代で、それは予想よりはるかに早く、深刻でしょう。08年なんて大した危機じゃなかったな……と振り返らなくてよいことを祈ります。

AERA 2018年10月8日号

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ぐっちー

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ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中

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