事実、日本女子体育大学の佐々木万丈氏の論文によると、ある体育大学の女子学生188人に調査したところ、高校時代にバレーボール部だった学生では84.2%が、ソフトテニス部だった学生では72.7%が、体罰を受けていた(下のグラフ)。

 女子は暴力的指導を受けやすいだけではない。今後パワハラ指導を解決する道のりを考えると、「女子のほうが険しいのではないか」との見方もある。そう指摘する一人が、スポーツ倫理学が専門で全日本柔道連盟コンプライアンス委員を務める日本福祉大学スポーツ科学部准教授の竹村瑞穂さんだ。

「なぜなら、日本では女子のほうが男子より自律性が低いと思われがちだからです。つまり、自分で意思を決定し、判断し、行動を決める力が弱いと見なされやすい。本来は、そこに科学的な根拠は何もないはずなのに、そのように見なされ、指導されることによって、自律性、自立性が欠如した選手が生み出されてしまうといった構造があるのかもしれない。男性指導者と女性選手の関係性では、過去を振り返れば男尊女卑の歴史の中で、女性選手が周りの言うことを聞き、受け身になってしまう環境が作られがちであったのは事実でしょう」

 女子が暴力的指導を受けやすく、かつそれを許容しやすいのには、社会的背景があるのだ。竹村さんによると実際、「女子は殴らなければわからない」という理由で体罰をした事例の報告もあるという。

(ライター・島沢優子)

AERA 2018年9月24日号より抜粋