「国際ボクシング連盟の常務理事を8年務めた経験から世界で顔が利くのは事実で、五輪で判定を抗議で覆したこともある。連盟はかつて取材に非協力的だったが、山根氏はお笑い芸人の『しずちゃん』が五輪を目指して練習する模様を公開するなどマスコミへのアピールも上手だった。強面だけど正直でお茶目な一面もあり、人物的にも魅力がありました。しかしここ数年は息子を重用しすぎるなど明らかに変節しましたね」

 ボクシング界でもプロアマ交流が解禁されつつある中、山根氏の独断で門戸が開かれない指導者がいる。元WBAスーパーフライ級チャンピオンの名城信男氏だ。引退後の2014年、母校の近畿大学ボクシング部ヘッドコーチに就任したが、16年の岩手国体の際、アマチュア資格がないのに練習場で教え子のミット打ちの相手をしたことを理由に、あらゆる試合会場への出入りを禁じられている。同部の前総監督で、かつては山根氏の秘書的立場だった澤谷廣典氏(55)はこう憤る。

「名城がプロ時代に所属していたジムの会長が、自分に対して挨拶に来ないという些細な理由で毛嫌いしているのです。同じ大会の練習場には山根氏が懇意にしている別のジムの現役プロボクサーが選手団の身分証を借りて入っていたのに、そちらの関係者にはなんのお咎めもなかった」

 ある意味カリスマだった山根氏を失うアマチュアボクシング界。来年2月の改選期を待たずに臨時総会で現体制を一新するのかも含め、方向性は未定だ。(編集部・大平誠)

AERA 2018年8月27日号