8月7日にあった臨時理事会の後、報道陣に対し「暴力団関係者と交際があったことは事実」と認めた山根氏。明け透けな語り口はワイドショーなどで「ノーガード戦法」と揶揄された (c)朝日新聞社
8月7日にあった臨時理事会の後、報道陣に対し「暴力団関係者と交際があったことは事実」と認めた山根氏。明け透けな語り口はワイドショーなどで「ノーガード戦法」と揶揄された (c)朝日新聞社

 絶対的な「終身会長」として日本ボクシング連盟に君臨した山根明氏。 彼の権力を支えたのは、「世界」との強力なコネクションだった。

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「そろそろ潔く辞めましょう、悪しき古き人間達」

 ロンドン五輪で金メダル、プロでもWBA世界ミドル級チャンピオンに上り詰めた村田諒太選手にそう迫られた一般社団法人日本ボクシング連盟がようやく、重い腰を上げた。恣意的な判定の強要や助成金の不正流用の証拠などが次々と発覚し、反社会勢力との交友を自ら認めて「終身会長」を辞任した山根明氏(78)が、会長だけでなく、会員資格も喪失したことを15日、連盟が発表した。

 山根氏による連盟の私物化や村田選手のプロ転向を巡るパワハラ行為は、昨年8月、週刊文春が報道。さらに今年4月に都道府県連盟幹部らが「日本ボクシングを再興する会」(鶴木良夫会長)を発足させて、7月下旬、日本オリンピック委員会(JOC)や関係省庁に告発したが、連盟の動きは鈍かった。

 問題が一気に注目を浴びたのは、この告発により、リオデジャネイロ五輪にライト級で出場した成松大介選手に日本スポーツ振興センターが交付した240万円の助成金が、山根氏の指示によって別の2選手と3等分されたことが明らかになってからだ。不正流用の発覚を恐れる連盟の女性理事が成松選手に口止めを求めるやり取りの音声を複数のテレビ局が放送、蜂の巣をつついたような騒ぎが始まった。

 地方の大会で山根氏を迎えるための過剰接待の様子や、国体で2度のダウンを奪った岩手の選手が、山根氏の出身母体の奈良県連盟所属の選手に判定負けする不可解な「奈良判定」のビデオなどが報じられた。山根氏は自らを「男・山根」と名乗り、実在する元暴力団組長の名前を挙げて交友を認めるなど言いたい放題。村田選手らを悪し様に罵る様子もお茶の間に繰り返し流され、「悪しき古き人間」が自分であることを追認してしまった。

 8月8日に日本連盟会長と理事職を辞任すると発表した際には、「これからもアマチュアボクシングとの関係は変わりません」と院政に移行するような含みを残していた。

 なぜこれほどまでに影響力があるのか。山根氏をよく知るボクシングジャーナリストはこう言う。

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