津賀一宏(つが・かずひろ)/1956年、大阪府出身。79年、松下電器産業(現パナソニック)に入る。社内カンパニーのオートモーティブシステムズ社の社長などを経て2012年6月、社長に就く(現職)(撮影/写真部・松永卓也)
津賀一宏(つが・かずひろ)/1956年、大阪府出身。79年、松下電器産業(現パナソニック)に入る。社内カンパニーのオートモーティブシステムズ社の社長などを経て2012年6月、社長に就く(現職)(撮影/写真部・松永卓也)

 今年3月に創業100周年を迎えたパナソニック。「次の100年」は何の会社になるか。津賀一宏社長が将来に向けた構想を語った。

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 この会社が100年間でここまで大きくなって、多くのお客さまにご愛顧いただいている。存在そのものが「何か」を成し遂げた証しでしょう。

 何か。あえて言うなら創業者がめざした世界、すなわち「水道哲学」です。世の中にいいものを安く普及させることによって、人々の暮らしを豊かにする。電球であったり電池であったり、性能がいい製品を安くつくる産業を成し得たと考えています。

 品質を担保するには部品が非常に重要で、部品メーカーさんと一緒に部品産業もつくりました。生産技術にも長年力を注いできたので、スマートフォンや電気自動車の時代になっても日本の部品産業は強い。

 創業者が亡くなった後の29年間、経営理念を時代に合わせて実現しようとしてきました。「松下電器が将来いかに大きくなっても、つねに一商人との観念を忘れず」という創業者の言葉があります。お客さまのお困りごとや「お役立ち」を忘れると松下電器は存在価値を失うと言っているのです。経営に行き詰まった際に「本当にお客さま視点で見ていたのか」と反省すると、何を直すべきか自然に導き出されます。ここまでの100年は創業者の100年でした。

 次の100年は何の会社になるのか。この質問には「自問自答しています」と答えます。「この変化の激しい時代に自問自答しないほうがおかしいん違いますか」と開き直りました。お客さまが決めればいいのです。

 よく「天の声」と言うように、お客さまの声がいちばん大事。いまは企業からお困りごとを直接聞いて、解決に向けて知恵を出していくのがパナソニックらしいと考えています。家電を中心に物事を見る考え方を捨て、人々の「くらし」をすべて、事業領域で表現すれば家電のほか住宅、自動車関連、B2B(企業向け事業)で、お役立ちを探しています。

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