銀座にクラブを構えて36年、「クラブ由美」の伊藤由美ママ。『できる大人は、男も女も断わり上手』など著書も多い(撮影/門間新弥)
銀座にクラブを構えて36年、「クラブ由美」の伊藤由美ママ。『できる大人は、男も女も断わり上手』など著書も多い(撮影/門間新弥)

「昭和の人に聞きました。ウソと言えば?」ランキングがあったら、第1位は「折れたタバコ」で鉄板だと思う。

 はい、きょとんとしている若いあなたのために、ちょっと補足します。「折れたタバコ」とは1974年に、歌手で俳優の中条きよしがヒットさせた演歌「うそ」(作詞・山口洋子)に出てくる、最初のフレーズ。

 歌詞のなかで女性主人公は、「折れたタバコの吸い殻」を見ただけで、恋人に「いい女」ができたことを察知する。言うまでもないが、「女」と書いて「ひと」と読む。で、自分を傷つけまいと、ウソを重ねる恋人を「やさしいウソのうまい人」などとして、ますます切ない恋慕を募らせる、と。

 まあ、浮気なんてしておきながら、「やさしいウソ」も何もないもんで。だいたい世の中、タバコを吸う人だってもう少数派。「折れたアイコス」じゃあ、色気も、情緒も、あったもんじゃない。ところがだ。

「この歌詞は、40年以上経った今も共通する、永遠の真理じゃないかしら」

 そう話すのは、東京・銀座にクラブを構えて36年、大人の男女の間を交錯する多くのウソを見てきた「クラブ由美」の伊藤由美ママだ。では詳しく、ウソとの付き合い方について、語ってもらおう。

 まず許せるウソと言えば、「勢い余ってゴルフの最高スコアを水増ししてしまう」ような、かわいいやつ。

「ちょっとだけ自分を大きく見せたいというのは、バブル時代の女の子たちがブランド品を競って買ったのにも似ています。この手のウソは、かえって夢を実現するためのモチベーションになるかもしれませんね」

 また、中条きよしの「うそ」の歌詞のように、バファリン並みに優しさからついているウソであれば、あえて追及せずに楽しむくらいが吉となる。

「問い詰めすぎて修羅場になると、楽しかった思い出が、哀(かな)しみや憎しみに変わってしまう。歌詞にも『ひとりの体じゃないなんて』と、ホロリとくるセリフで主人公を気遣う場面が出てきます。優しいウソはその場限りでもだまされてあげては」

 一方、「許せないウソ」といえば、例えばこんなの。

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