「家柄とか、学歴とか、資産とか、どんどん盛ってしまう人はいます。銀座で“粋人”を目指されるなら自然体がベスト。すべて見透かされてしまいますから。コンプレックスの裏返しと考えると、笑えませんよね」

 いずれにしても、由美ママが夜の銀座を生きてきて、ひとつだけ間違いないと確信していることがある。それは「ウソはいつか必ずバレる」ということだ。最初は小さなウソが、つじつま合わせのためにまたウソをつき、どんどん肥大化。サスペンス劇場を地で行くように、破綻(はたん)に追い込まれた人もいた。

「ウソをついていいとしたら、相手を思いやるがゆえに墓場まで持っていく覚悟と根性がある人。そういう人になら、優しくだまされてあげるという人も少なくないはずです」

 銀座で語り継がれている「複数の女性とのデートマナー」があるという。間違えるので相手の名前を呼ばない、プレゼントは全員に同じ物、映画を見るなら同じ作品……って、恋人の数だけ、同じ映画を見るわけですね。ウソをつくのにも、努力が必要ってこと。おつかれさま。

 ところで由美ママ、最後にひとつ質問です。折れたタバコの吸い殻で、本当にウソがわかるものでしょうか?

「ええ、わかりますよ。昔は、ウソがバレて都合が悪くなると、視線をそらし間を持たせるためにタバコに火をつけるという人も多かった。いつもと吸い殻の様子が違ったら、それは動揺のサインかもしれませんね」

 パッパラパヤパ~ル~ルル~……「うそ」のイントロが聞こえる。(ライター・福光恵)

AERA 2018年6月11日号