それだけじゃない。双児は声をかけられることが多い。主に午前中の住宅街は足腰の丈夫な老人がウヨウヨいて、「あら、可愛い、女の子?」なんて具合に。こちらも時間がある時だったらいい。でもそうとは限らない。

 向こうサイドは日向、ベビーカーサイドが日陰だったりしてもお構いなし。マイペースに会話は続けられる。

 双児にリードをつけることも検討しているが、「なんて可哀想な!」とお叱りを受ける事例が後を絶たないらしい。1人で2人を見るということはいわば“テトリスの終盤”なのはわかってほしい。

 つまり、面倒くさいのだ。

 イクメンが当たり前のこの時代、「面倒くさい」ということが言えないのが苦しい。

 クタクタになって帰宅、双児が足にまとわりついてくる。無下にもできないので抱き上げる。その時彼らから香るあの子供独特の甘い匂い。一瞬にして「ま、いいか」となる。ズルイ。でも、それだけは真実なのかもしれない。

AERA 2018年4月30日-5月7日合併号

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マキタスポーツ

マキタスポーツ

マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。子供4人。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである。』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞。近刊に『越境芸人』(東京ニュース通信社)。『決定版 一億総ツッコミ時代』(講談社文庫)発売中。

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