長生きするほどお得?「トンチン年金」ってなに?(※写真はイメージ)
長生きするほどお得?「トンチン年金」ってなに?(※写真はイメージ)

 最近よく聞く「人生100年時代」は、英ロンドン・ビジネススクールの教員2人が著し、ベストセラーとなった書籍『ライフ・シフト』で提唱され、話題となった考え方だ。現実味を帯びてくるなかで、「長生きリスク」に備える保険商品も続々と登場し注目を集めている。その筆頭格が、早く死亡した人の受取額を減らし、その分を長生きする人に回す「トンチン型年金保険」だ。

 イタリアの銀行家、ロレンツォ・トンティが考案したことからこの名が付けられたとされ、日本では日本生命が16年4月に「グランエイジ」を発売した。その後、第一生命、かんぽ生命、太陽生命、マスミューチュアル生命も同様の商品を発売している。

 いずれも50歳から加入が可能で、保険料を20年程度払い込む。払込期間中に死亡した場合は大きく元本割れするが、長生きすれば毎年決まった額の年金を死ぬまで受け取れる。

 日本生命の広報部・杉山太一さんは、日本型トンチン年金開発の経緯をこう話す。

「保険会社は低金利によって、既存の年金保険で返戻率の維持が難しくなっている半面、長生きに伴うお客さまの経済的な不安は高まる一方です。このような環境下で、なんとか保険商品でセカンドライフを充実させられないかと考えたのがきっかけでした」

 本来の「トンチン年金」は、早く死亡すると支払った保険料をほとんど取り戻すことができず、長生きした人が総取りするしくみだというが、さすがに一銭も返ってこない商品は日本人には受け入れにくいと考えたという。

 そこで、長生きできなかった人の返戻金を支払った額の7割程度に設定し、残りを長生きする人に回すというしくみにした。

 支払った額と同じ額を取り戻せる「損益分岐点」は男性なら90歳前後、女性なら95歳前後が一般的で、それより早く死亡すれば支払った額を回収できない。貯蓄や資産運用の観点からは必ずしも有利な商品とはいえないが、長生きすることで老後の資金が尽きてしまうリスクをカバーしてくれる。

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