


京都産業大学経営学部の大室悦賀教授によれば、ソーシャルイノベーションは四つの流れに分類できる。政治が主役の「イギリス型」、NPOやボランティアも含めた市民が主体の「ヨーロッパ型」、ビジネス、つまり市場の力を利用する「アメリカ型」、そして「消費行動型」だ。
政治や市民社会が未成熟な日本が目指すべきは「消費行動型」。ビジネスとして成り立たせること、そして消費者が自らの消費行動を変えることで企業の変化を促すことが不可欠だ、と大室さんは言う。
だが、オーガニックやフェアトレードが当たり前のヨーロッパに比べ、日本では農薬使用量や遺伝子組み換えなどへの関心は高いとは言えない。
「買い物は投票と同じ。オーガニック食材やエシカルファッションを選ぶことが、生産者の労働環境を守り、地方の過疎化を防ぐことにつながる。私たちの選択が変われば、企業も変わらざるを得ません」(大室さん)
確かに、2000年代、途上国の生産環境に配慮したバッグを販売するマザーハウスの山口絵理子さん(36)やフェアトレードのダイヤモンドやゴールドを使ってアクセサリーをつくるHASUNAの白木夏子さん(36)は、日本に社会起業家という言葉を広めた先駆者だ。
マザーハウスは国内26店舗のほか、香港や台湾などにも直営店を構え、消費者が同社のバングラデシュ工場で生産過程を体験できるツアーも開催している。社員数も年々増え続け、2017年段階で106人。入社すると年収300万円が保障される独自のベーシックインカム制度を整え、社会を変えるためには感性を磨く必要がある、と美術館や博物館の入館料を月4回まで全額補助している。
10年代に入ってからも、柿本可奈子さん(49)のFeliz(フェリーズ)、岡田有加さん(32)のINHEELS(インヒールズ)など多くのエシカルファッションブランドが生まれ、ルミネや伊勢丹、パルコなどの百貨店でエシカルファッションに特化したフェアが開催されるなど、人気も定着しつつある。(編集部・竹下郁子)
※AERA 2018年2月5日号より抜粋