一般社団法人WorkAnywhere 川口良さん(34)/米イリノイ州立大学卒業後にグーグルジャパンに入社。当事の同僚タージ・キャンベルさんと共に、より快適なリモートワークのシステムを開発するために起業(撮影/高井正彦)
一般社団法人WorkAnywhere 川口良さん(34)/米イリノイ州立大学卒業後にグーグルジャパンに入社。当事の同僚タージ・キャンベルさんと共に、より快適なリモートワークのシステムを開発するために起業(撮影/高井正彦)
写真は理想のオフィスの完成予想図(WorkAnywhere提供)
写真は理想のオフィスの完成予想図(WorkAnywhere提供)

 社会が抱える課題や自分たちの生きづらさをビジネスの力で解決しようと立ち上がる、社会起業家が続々登場している。

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名だたる企業が取り組んでもなかなか成果を上げられない「働き方改革」に技術の力で挑戦するのが、一般社団法人WorkAnywhere代表理事の川口良さん(34)。離れた場所にいる人同士が相手の空気感までをも読み取れる映像音響システムで、リモートワークのあり方を変えようとしている。

 外出先から上司に悪い報告をしなければならなくなったとき。上司はデスクにいるのか。デスクではピリピリしているのか。それともリラックスしているのか。そんな「空気感」がスマホアプリに通知される。いまだ!と思えば「肩をたたく」ボタンをタップ。会話が始まる。

 離れたオフィスで働くチームとは、壁一面のスクリーンでビデオ会議。画面の向こうにいる複数のメンバーのうち、いま話しかけている相手に声や目線が向くように画像と音声が補正される。目の前にいるときと同様の臨場感が生まれるという。

 川口さんは元グーグルジャパンのエンジニア。常に複数の海外のオフィスと連絡を取り合っていた。

「既存のリモートワークは、問題が起きたからビデオ会議を、という『ニーズベース』のコミュニケーションがほとんど。それでは信頼関係は築けないと痛感しました」(川口さん)

 他愛もない会話やアイデアもパッと口に出したい。自然発生的な会話を可能にする技術を目指し、同じく元グーグルのプロダクトマネージャーだったタージ・キャンベルさん(32)とともに起業。今年、コワーキングスペースなどで実験を始め、医療や教育など幅広い分野での活用が期待されている。

(編集部・竹下郁子)

AERA 2018年2月5日号