独自の進化を遂げ、ユニークさを獲得してきたパンダ。パンダ座りで器用に食べる人気の姿も、生存のための進化と結びついている(写真:高氏貴博さん提供)
独自の進化を遂げ、ユニークさを獲得してきたパンダ。パンダ座りで器用に食べる人気の姿も、生存のための進化と結びついている(写真:高氏貴博さん提供)

 クマ科か、ジャイアントパンダ科か。そんな論争がされたほどパンダは動物界の「不思議ちゃん」でもある。遺伝子解析では約2千万年前、クマから分岐したと見られている。ポイントは、肉食から竹や笹を食べる草食に転換した点だ。私たちが「カワイイ~!」と声をあげるチャームポイントも、実は“生存のための戦略”と無関係ではない。

 例えば、パンダの白と黒の模様。体が白いのは保護色となって雪のなかで目立たなくするため。目の周りが黒いのは、雪の反射光から目を保護するためなど諸説ある。

「最近ではむしろ個体識別のためという説が有力です。パンダは通常単独生活を送りますが、繁殖期には出合わないといけませんから」

 そう語るのは上野動物園の前園長で、日本パンダ保護協会会長の土居利光さん(66)だ。

 多くの人が羨望の眼差しを向ける“食っちゃ寝生活”も竹と関係している。パンダの腸の長さは草食動物のように長くない。このため食べている竹の2割程度しか消化ができず、大量に食べる必要があるのだ。加えて高いカロリーを得られないため、寝ることで省エネしている。

 パンダにおいて最もユニークなのは、パンダ座りをして、前足を器用に使い食べる姿だ。東京大学総合研究博物館の遠藤秀紀教授(52)はこう言う。

「おなかを見せて正面を向いて食べる動物は人やサル以外にはパンダぐらいです。人間に特有のコミュニケーションのスタイルのため、人はつい親近感を抱くのでしょう」

 他のクマと違い、ものをうまくつかんで食べられるのは5本の指に加え、第6、第7の指を進化の過程で獲得したからだ。遠藤教授はその機能を発見し世界的に注目された。

先の土居さんは加えて言う。

「他の動物は常に逃げられる体勢で食事します。のんびりと構えていられるのは外敵の心配がないからでしょう」

 食料となる竹を求めて、パンダは山深い竹林という環境を得て生き永らえてきた。竹は一年中ふんだんにあるため、あくせくする必要がない。天敵もいないため、のんびり無防備でいられるのだ。

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