青野慶久(あおの・よしひさ)/1971年生まれ。大阪大学卒業後、松下電工(現パナソニック)を経てサイボウズ設立、社長に。総務省ワークスタイル変革プロジェクト外部アドバイザー。著書に『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)(写真:サイボウズ提供)
青野慶久(あおの・よしひさ)/1971年生まれ。大阪大学卒業後、松下電工(現パナソニック)を経てサイボウズ設立、社長に。総務省ワークスタイル変革プロジェクト外部アドバイザー。著書に『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)(写真:サイボウズ提供)

 副業を容認する企業が増えている。ソフトウェア開発会社「サイボウズ」もそのひとつだ。その背景や効果などを青野慶久社長に聞いた。

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 2012年から社員の「複(副)業」を認め、個人の自立と多様な働き方の実現を目指してきました。「解禁」の最大のメリットは、社内でオープンイノベーションが起きたことです。サイボウズの中では得られなかった知識、経験、人脈を外から呼び込むことができます。

 今年1月にはサイボウズでの仕事を副業とする人も募集。100人を超える応募がありました。週1回、サイボウズを手伝ってくれている人もいます。「副業を肯定的に評価するサイボウズで働きたい」「副業を許してくれる会社にもっと貢献したい」などと、社員のモチベーション、ポテンシャルのアップ、採用力強化につながっています。

「複(副)業」を解禁したのは、「認めてほしい」と訴える社員がいたからです。社長の立場からすると、「えー! なんで、そんな浮気するようなこと言うの」と困惑しました。そうしたら社員が言うんです。「青野さん、何言ってるんですか、これからは、そんなの当たり前の時代ですよ」って。

 それまでは就業規則で副業を禁止していましたが、いまは解禁して、問題やデメリットがあれば対処していくというスタンスに切り替えました。

 会社のリソースを使って複(副)業する場合は、会社への報告を義務付けています。会社支給のパソコンを使います、会議室を借ります、と事前に報告してもらう。パソコンが壊れたら、修理代を会社と個人のどちらが負担するかという問題も生じますから。

 大事なのは「伏業」にしないこと。隠さずにみんなで情報をシェアすれば、「あの分野の複(副)業をしているのか、だったらあの人、紹介してよ」と人脈も共有できます。これが伏業になってしまうと、せっかくいろんな人が多様な活動をしていても、そのメリットが会社に還元されない。オープンで正直なのが何より大事です。

 会社に報告義務のある分野以外も含めると、複(副)業している社員は約3割でしょうか。中には別会社を経営している人もいますが、パラレルで仕事をしている人は少数です。執筆や講演、イベント開催など単発の仕事が多く、ITエンジニアやマーケティングといった職業的な専門性を活用する人もいれば、趣味や興味の対象から入る人もいて、千差万別です。

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