シングルマザーのA子さん(44)。70歳から先の人生が見えないという。「とりあえず借金もなく、平穏に人生が終わってくれたらそれでいいかな」(撮影/鈴木芳果)
シングルマザーのA子さん(44)。70歳から先の人生が見えないという。「とりあえず借金もなく、平穏に人生が終わってくれたらそれでいいかな」(撮影/鈴木芳果)

「人生100年時代」に突入するニッポン。住み慣れた地域で老いて安心して死ぬことができたのは、もはや過去の話だ。非正規労働、シングルマザー、フリーランス、LGBT……。生き方が多様化する中、老後、そして「死に方」の不安とは。

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「孤独死が頭をよぎります」

 関東地方に暮らすA子さん(44)は、そう話す。小学2年から高校2年までの4人の子どもを育てるシングルマザーだ。

 離婚の増加を背景に、シングルマザーも増加傾向にある。15年の国勢調査では、母子世帯は約75万世帯で、95年より約22万世帯増えた。

 A子さんは4年前、夫の子どもへの暴力が原因で離婚した。今は近所のファミレスで、パートとして朝から晩まで働く。月220時間近く働いても、給与は手取りで月約15万円。生活はギリギリだが、今はまだ健康で、働き口もあるので何とか生活できている。だが、20年後、30年後を考えると不安で押しつぶされそうになる。

 子どもたちには親の都合で離婚し苦労をかけてきたから、将来は絶対に頼らないと決めている。かといって配偶者もいない。貯金はなく、老後の公的年金もどうなるかわからないので、パートで働いて補うしかない。だが、体力も衰えていくので今みたいに働けないだろう。そもそも、今の職場は70歳までしか働くことができない。子どもたちが巣立った後、70歳でポックリ死ねたらいいが、それ以上長生きしたらどうしよう。老人ホームに入るお金などなく、「孤独死」の3文字が頭をよぎるのだという。A子さんは言う。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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