ラトビア美術界の新星が放射線で作品をつくった意図は (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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ラトビア美術界の新星が放射線で作品をつくった意図は

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桑原和久AERA
ヴォルデマース・ヨハンソンズさん/現代美術作家・音楽家。1980年ラトビア・リガ生まれ。オランダでソノロジー(音そのものを研究する学問)を学んだ (c)LOKO GALLERY

ヴォルデマース・ヨハンソンズさん/現代美術作家・音楽家。1980年ラトビア・リガ生まれ。オランダでソノロジー(音そのものを研究する学問)を学んだ (c)LOKO GALLERY

ヨハンソンズさんはリガの大聖堂や、ベネチア建築ビエンナーレにおいて、音楽と芸術を融合させた独特の世界観を持つ作品を発表し続けている。東京・代官山のLOKO GALLERYでの個展は11月18日まで (c)LOKO GALLERY

ヨハンソンズさんはリガの大聖堂や、ベネチア建築ビエンナーレにおいて、音楽と芸術を融合させた独特の世界観を持つ作品を発表し続けている。東京・代官山のLOKO GALLERYでの個展は11月18日まで (c)LOKO GALLERY

 放射性物質が崩壊するタイミングは予測できない。このことは私たちの文明を象徴しているが、その不安定性、予測不可能性をサウンドで表現したアーティストがいる。

 かつて旧ソ連に属し、現在は独立国としてEUに加盟しているラトビア。この人口約200万人の小国で、現代美術界の新星と目されるのがヴォルデマース・ヨハンソンズさん(36)だ。彼の日本国内では初めてとなる個展「Uncertainty Drive/不安定装置」が、東京で開かれている。

 ギャラリースペースの中央に、小山のように見える幾何学的な形状の装置が設置されている。その装置には無数のプラグが差し込まれ、そこから延びるコードが、2台のレコードのターンテーブルのような機械に接続されている。その上ではレコードならぬ円形のガラス板が回転している。そして、天井の両脇につるされた鉄製のスピーカーから発せられる、何とも形容しがたい音が室内に反響し、鑑賞者を不思議な感覚に誘う。

【不思議な装置の写真はこちら】

 実はガラスの円盤には、人体に害のないレベルの微量の放射性物質が埋め込まれている。放射線が放出された瞬間をガイガーカウンターがとらえる。ガイガーカウンターでサンプリングされた放射線放出の「タイミング」のデータは、ヨハンソンズさんが作り出したアルゴリズムに従い、ギャラリーの中央に置かれた小山のような装置、アナログシンセサイザーによって「サウンド」に変換される。それが、ギャラリー内に反響する不思議な音の正体だ。ヨハンソンズさんは言う。

「放射性物質は原子核が崩壊する瞬間に放射線を発します。崩壊する確率は物質によって決まっているので、1時間ごとに放射線を発する頻度の予測はつきますが、そのタイミングまでは完全には予測できないのです」

 放射線を発するものは、便利なものから危険なものまで、私たちの暮らしにあふれている。

「放射能は不安定性、予測不可能性をはらんでいます。それは同時に、私たちの文明がそのような状態にあると言うこともできるのです」


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