法政大4年の稲岡志遠さん(23)は、3年の夏から1年ほど、ロシアに国費留学した。貴重な経験だったが、就職活動を始めるにあたって、困りごとも生じた。日本にいないので、OB訪問ができないのだ。

「興味のある会社のホームページを見たら、モスクワ駐在員が紹介されていたんです。その人をフェイスブックで探して、メッセージを送ったら、大学の先輩でもないし、面識もないのに、OB訪問を受けてもらえました」

 つながる強みを感じた瞬間だった。LINE上には434人、フェイスブック上には国内外含めて869人もの友人がいる。卒業後はエネルギー関連の会社に進むが、「これまで色々な人によくしてもらったから、恩返しがしたい」と考えている。

 若者たちは、つながることの可能性と強さを知っている。『「つくす」若者が「つくる」新しい社会』の著者で、アサツー ディ・ケイ「ADK若者プロジェクト」リーダーの藤本耕平さんは言う。

「彼らは、どのコミュニティーにいればどんなことができるか、居場所がつくれるかも熟知しています。空気を読むのは、キャラを演じるためではなく、場に応じた自分の一面を切り取って表現するため。膨大なつながりがあるから、人間関係の質にも意識的になる。カフェに行くならこのメンツ、カラオケならこのメンツと、友人もTPOに合わせ使い分けているのでしょう」

 新しいツールを率先して使いこなし、リアルとネットを切り結んでいく若者たちは、現代におけるコミュニケーション開拓者でもあるのだ。(編集部・澤志保)

AERA 2017年10月30日号より抜粋