サンタローザ市民が誇るスヌーピーの生みの親、故チャールズ・シュルツさんの家も全焼した。愛用の机や持ち物が失われたが、幸い、原画などを保管する美術館は無事だった。

 ナパ郡やソノマ郡は美しいブドウ畑と贅沢な敷地のワイナリーで知られる。家族経営で規模が小さいものの、高級ワインを生む土地として知られ、ナパだけで年間約350万人の観光客が訪れる。日本からのワイナリーを巡るツアーも人気だ。同州のワイナリーで作るワイン協会によると、2016年の米国産ワインの日本への輸出額は8700万ドル(約97億4400万円)で、その9割がカリフォルニア産だ。被災した地域には約1200軒のワイナリーがあるが、ナパ郡だけで約50のワイナリーが被害を受けた。同協会は「いまもまだ被害の全容はつかめていない」という。

 ソノマ郡で祖父の代からワイナリーを営む「エンシェント・オーク・セラーズ」オーナーのケン・モホルトシーベルトさんも、自宅と、同じ敷地内にあったワイナリーが全焼した。

「深刻なのは、この地域の今後の労働力の問題だ」

 多くのワイナリーはメキシコなどからのヒスパニック系移民の労働力に支えられている。

「長年働いてくれていた人も多い。彼らが家を失い、さらに不法移民の取り締まり強化でメキシコに帰ってしまえば、この地域のワイナリーは深刻な影響を受ける」とモホルトシーベルトさんは心配している。

 避難所を管理している州の職員は「トランプ政権になってから、不法移民は強制送還におびえている。力になりたいが、避難所にいた人たちは政府の援助機関が入ってきたとたんに通報されるのを恐れて逃げ出してしまった」と肩を落とす。

 ワインの町の復興は、こうした移民の行方にもかかっている。(朝日新聞記者・宮地ゆう)

AERA 2017年10月30日号