小説を書く楽しさは「自分の伝えたいことが読む人に伝わっていると感じられること」とるりかさん。気に入った言葉や知らない言葉は常に書き留めている(撮影/写真部・小原雄輝)
小説を書く楽しさは「自分の伝えたいことが読む人に伝わっていると感じられること」とるりかさん。気に入った言葉や知らない言葉は常に書き留めている(撮影/写真部・小原雄輝)

 中学生にして作家デビューを果たす鈴木るりかさん。彼女の意外な執筆のきっかけや、その作品が生まれる背景に迫った。

「小説を書く時は常に読む人のことを考えて、独りよがりな小説にならないように気をつけています」

 星美学園中学校(東京都北区)2年生の鈴木るりかさん(13)。10月17日、14歳の誕生日に連作短編小説集『さよなら、田中さん』で作家デビューを果たす。

 初めて小説を書いたのは小学4年生の9月30日だ。その日、図書館で小学生限定の新人公募文学賞「12歳の文学賞」(小学館主催)の存在を知った。応募締め切り日当日でもあったが、賞品の図書カード10万円とパソコンに引かれた。

「大好きな(漫画雑誌)『ちゃお』を一生分買いたくて、原稿用紙11枚を半日くらいで手書きで一気に書き上げました」

「私は、多分、今日本で一番お金のことを考えている小学生だ。」で始まるその短編「Dランドは遠い」は、1024通の応募作から大賞に選ばれた。その際、書き続けることを勧められ、小5、小6と続けて応募。史上初の3年連続大賞となった。

「ストーリーはいつも勝手に湧き上がってきます。キャラクターが勝手にしゃべり出してくれるので、それを書き留めている感じです」

 アイデアは日常の生活で見たり聞いたり、観察する中から生まれる。デビュー作の主人公・花の家庭環境を母子家庭にしたのは、近所に引っ越してきた母娘がきっかけだった。

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