池田学 世界が注目する細密画家の「予兆」から「誕生」までの物語 (1/3) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

池田学 世界が注目する細密画家の「予兆」から「誕生」までの物語

このエントリーをはてなブックマークに追加
三橋麻子AERA
「偶然性が絵をおもしろくする」と池田は言う(※写真はイメージ)

「偶然性が絵をおもしろくする」と池田は言う(※写真はイメージ)

 東日本大震災の3年前に描いた作品「予兆」で注目された細密画家の池田学の個展が始まる。新作「誕生」は「困難な時代の行く末に希望を」という思いで描いた。

 波しぶきを浴び、がれきから立ち上がる大樹に薄紅色の花が咲き誇る。画家・池田学(43)が3年余をかけて、絶望から蘇(よみが)る生命の輝きを描きあげた。

 例えば「興亡史」という作品では、1ミリに満たない繊細な線で2メートル四方のパネルに壮大な城を描く。細部に目をこらせば、5ミリほどの白抜きの人がさまざまに生を営む。池田はペンを用いて細密に描く画風で海外でも注目を浴びる画家だ。

●日本からの映像に動揺

 池田は2012年2月、岩手県陸前高田市の雪原に立っていた。1年前まで立ち並んでいた商店や住宅は根こそぎ破壊された。残されたのは、天に伸びるように立つ一本松。当時暮らしていたカナダから一時帰国した際、真っ先に東日本大震災の被災地に足を向けた。

 池田の代表作のひとつに、大波を描いた08年の大作「予兆」がある。波間には電車、線路、船……。自然にのみ込まれるようにも、波間から現れるようにも見える。池田は、

「悪いことばかりではなく、よいことも含めて『予兆』と名づけた」

 と話す。

 だがその3年後、東日本大震災による大津波が日本を襲う。文化庁芸術家在外研修員として家族とともにバンクーバーに滞在していた池田は、日本からの映像に動揺した。「予兆」が予言だったかのように、波にのまれる母国の姿があった。

●大樹の枝先は花なのか

 この未曽有の災害に画家としてどう向き合うべきか。直後にあった米ニューヨークでの展覧会で、ニューヨーク・タイムズに称賛されるなど注目を浴びた池田は、ウィスコンシン州のチェゼン美術館に招かれ、この地で大作を描く決意をする。
 用意したパネルは縦3メートル、横4メートル。ペンで線を重ねるようにして描く池田は1日に10センチ四方しか描けない。当時をこう振り返る。


トップにもどる AERA記事一覧

続きを読む

関連記事関連記事

このエントリーをはてなブックマークに追加
あわせて読みたい あわせて読みたい