民進党代表に就任した前原誠司氏は「皆で支え合う社会」を目指す。基本理念は分配を重視する「オール・フォー・オール」(皆が皆のために)。立案したのは財政学者・井手英策慶應大教授だ。狙いは何かを聞いた。
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──なぜ今、「オール・フォー・オール」なのですか?
今の日本では、高校・大学の7年間で平均900万円かかります。仕送りは大学4年間で平均545万円。地方に住んで子どもを都会の大学にやると一人1500万円ほどかかる。親にとって教育費は重荷です。それだけではありません。保育園に子どもを預ける、病気になった時の医療費・介護。人生の様々な局面で必要となる費用が不安のタネになっている。一人で背負わず、皆で支え合う仕組みがオール・フォー・オールです。
──従来のやり方ではダメ?
日本の世帯収入は300万円未満が33%、400万円未満が47%。2人で働いても400万円。子どもを2、3人育て、大学にやり、老後に備え、住宅を買う、なんてできますか。500万円でも厳しいでしょう。世帯の6割が500万円未満です。昔は、貧しいとされる人は一部でした。金持ちから税金を取って貧乏人に配り、他の人は自己責任でやってくれ、で済んだ。ところが今は大勢の人が生活不安にさらされている。
●支え合って暮らす社会
──自己責任では手に負えない、ということですか?
日本はかつて貯蓄率世界一でした。高度成長の頃は稼いだカネを貯蓄に回すことができた。欧州の例が示すように、貯蓄率が上がると税率が下がり、税率が上がると貯蓄率は下がる。「生活の安心」を貯蓄で確保するか、税で満たすかの違いです。日本は貯蓄がないと不安な社会。なのに2人世帯の3割、単身世帯の5割が貯蓄ゼロです。
──不安から逃れられない?
そうです。生まれた家が貧乏だったというだけで人生が決まってしまう。それを「自己責任」と突き放す冷たい社会でいいのでしょうか。貯蓄がなくても不安はない、支え合って暮らせる社会という選択肢を私たちは示す。貧しい人にも余裕のある人にも応分の負担を求める。痛みは皆で分かち合い、負担したうえで、同等の行政サービスを受ける仕組みにすべきです。