AERA dot.

アルチンボルドが「寄せ絵」で表現したのは何の縮図?

このエントリーをはてなブックマークに追加
福光恵AERA

【「四季」 ≪春≫ 1563年/66×50センチ】王立サン・フェルナンド美術アカデミー美術館(スペイン・マドリード)蔵/ウィーンに来てまもない1563年の作品。描かれた植物は80種類と寄せ絵作品のなかでも最多を誇る。6年後、連作「四季」の一つとして、もう一つの連作「四大元素」と共に皇帝に献上された (c)Museo de la Real Academia de Bellas Artes de San Fernando. Madrid

【「四季」 ≪春≫ 1563年/66×50センチ】王立サン・フェルナンド美術アカデミー美術館(スペイン・マドリード)蔵/ウィーンに来てまもない1563年の作品。描かれた植物は80種類と寄せ絵作品のなかでも最多を誇る。6年後、連作「四季」の一つとして、もう一つの連作「四大元素」と共に皇帝に献上された (c)Museo de la Real Academia de Bellas Artes de San Fernando. Madrid

 東京・上野の国立西洋美術館で「アルチンボルド展」が開催中だ。16世紀のウィーンでハプスブルク家の宮廷画家として活躍。果物や野菜、動植物を寄せ集めた肖像画で知られる。作品は誰もが一度は目にするが、「なぜこんな絵を描いたのか」はよくわかっていない。

「現代美術のようなシュールさがある。500年近く前の作品とは思えなかった」

「実物を見るのは初めて。モチーフひとつひとつを、本気で描き込んでいた」

「近づいて見るのと離れて見るのでは別物。行ったり来たりがクセになる」

 こんな感想を語ってくれたのは、東京・上野の国立西洋美術館で開かれている「アルチンボルド展」を見た人たちだ。

「寄せ絵」と言われる「おもしろい絵」を描く画家のイメージが強いアルチンボルドだが、実は16世紀のウィーンで、伝統的な宮廷画家として活躍していた時期が長い。

 1526年、イタリアのミラノに生まれ、大聖堂のステンドグラスを手がけるなど装飾美術家として活躍したのち、36歳で宮廷画家としてウィーンの地に呼び寄せられる。ここでアルチンボルドが、神聖ローマ皇帝となる直前のマクシミリアン2世のために描いたのが、花々や野菜、動物などの絵を丹念に組み合わせ、目の錯覚を利用して一枚の絵に見せる「寄せ絵」の肖像画だった。

●写実的な画力は豊か

 あるときは、皇帝の鼻をウサギで、歯をエンドウ豆で、髪を鳥の巣で描いた。そんな自身の肖像画を、皇帝はムッとするどころかたいそう気に入って、レプリカを作らせ、プロパガンダに使うこともあったという。

 アルチンボルドといえば、日本でも「だまし絵展」などの常連で、その名前は知らなくても、作品や、作品からインスパイアされたチルドレンたちのデザインなどで、誰もが一度は目にしたことがあるだろう。

 しかし、そもそもは正統派の宮廷画家。いくら探しても、ジャガイモもライオンも見つからないごくフツーの肖像画や、自然界のアイテムを丹念に描写した写実作品も多く残している。

 寄せ絵作品の細部を見ればわかる通り、写実的な画力は豊か。「王道」の宮廷画家として生きていても、おそらく一生食いっぱぐれなかっただろう。

 それなのになぜ、わざわざ寄せ絵で皇帝の肖像画を描こうなんて思ったのだろう。


トップにもどる AERA記事一覧

続きを読む


このエントリーをはてなブックマークに追加