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稲垣えみ子「モノの数は豊かさにあらず!江戸の貧乏長屋に学ぶ」

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稲垣えみ子AERA

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年、愛知県生まれ。2016年1月まで朝日新聞記者。初の書き下ろし本『魂の退社 会社を辞めるということ。』(東洋経済新報社)が発売中

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年、愛知県生まれ。2016年1月まで朝日新聞記者。初の書き下ろし本『魂の退社 会社を辞めるということ。』(東洋経済新報社)が発売中

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

*  *  *
 会社を辞めることを考え始めた時、当然ながら最も不安だったのはお金のことだったのですが、それをもう少し下世話に表現すると「生活レベルが落ちる」。私は果たしてそれで平気なのか。こんなはずじゃなかったと思って生きるくらいなら辞めないほうがいいのです。

 で、こういう時大切なのはなんたって「イメージ」ではないでしょうか。人様にどう見られようが肝心なのは自分の心持ち。惨めなんかじゃないもん!と心から思うことができたなら、何も恐れることはなかろうに。

 実は私には、ある勝算がありました。

 それは大好きな時代劇を見ていてひらめいた。ベタな時代劇に必ず登場する貧乏長屋。それはもうえらく狭くて質素なのに、なーんか悪くないよなあと思えたんですね。

 なぜだろう。もしや……インテリアの統一性?

 時代劇だから当たり前なんだが、家も家具も自然素材。で、家も古けりゃ道具も古い。つまりはどれもがめちゃくちゃ使い込まれている。貧乏という設定ゆえなんだけど、継ぎだらけの布団で病気のおっかさんが咳き込み、その娘が真っ黒なタライで絞った手ぬぐいを母の額に置く図なんぞ、なんとも絵になる佇まいである。何しろそこには無駄というものがない。
 で、当時の我が高級マンションをぐるりと見回した。


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