●わざとバッティング

 上田さんによれば、14項目にはわざとバッティングするように作られているところもある。

「たとえばDive DeepとBias for Action。もうちょっと深掘りしたらもっといいものができる、でもそれには時間がかかる、という場合があります。私たち従業員に求められているのは、ジャッジメントです」

 その意思決定は、とにかく速い。スピードの鍵を上田さんはこう分析する。

「失敗や実験を恐れないからだと思います。アマゾンには“Unless we find better ways.(よりよい方法が見つからない限り)”という考え方があり、提案書などに書いてあることもあります。もし明日better wayが見つかって、よりよくなるなら、躊躇なく変えるということです」

クランツ:日本で数回転職しましたが、アマゾンの「失敗や間違いをしてもいい」という文化は他社と大きく違うと思います。お客さまのニーズを満たすために継続的に改善する。その中で何度か間違いがあっても、正しい方向に向かっているならそれでいい、そういう考えです。

 だから若手でも役員でも同じようにアイデアを出せるし、物事がやりやすい。これほど大きな会社なのにスタートアップのようで、私は好きですね。

中山:常にイノベーションを起こしているので、その中で働けるのは楽しい。技術の最前線に携われるので毎日学ぶ部分があり、刺激が多いです。

森本:アマゾンって、すごくシンプルだなって実感しています。リテールでは、低価格、利便性、品ぞろえという三つの柱がある。それをいかに高めるかを常に考えていて、それはこの三つがお客さまがいちばん求めていることだからなんです。一切ムダがないし、ムダなルールもない。会議では全員がしゃべれるし、みんなゴールをわかっている。それがいいなと思っています。

中山:みなさんフラットすぎて、さっきまでフレンドリーにしゃべってた人が、実は結構えらい人だった、みたいなこともありましたが(笑)。

(構成/編集部・高橋有紀)

AERA 2017年7月24日号