武藤嘉紀「力を与えてもらうという感覚」 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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武藤嘉紀「力を与えてもらうという感覚」

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武藤嘉紀が祖父と過ごした時間(※写真はイメージ)

武藤嘉紀が祖父と過ごした時間(※写真はイメージ)

 独ブンデスリーガのマインツに所属する武藤嘉紀選手が「AERA」で連載する「職業、ブンデスリーガー」をお届けします。大学在籍時からFC東京に所属し、日本代表にも選出。現在はマインツで活躍する武藤選手が異国の地での戦い、生活ぶりをお伝えします。

*  *  *
 先日、祖父から「1日でいいから、私に時間をくれないか」と言われました。

 祖父の家系は和歌山県にゆかりが深く、何より、度重なるけがに見舞われた孫のことがきっと心配だったのでしょう。そんな祖父の勧めで、共に田辺市の熊野本宮大社を訪れました。

 僕自身は、これまでずっと、道を切り拓いていくためには「自分の努力がすべて」だと思っていました。「運」や「偶然」を引き寄せるのも、自分の努力次第だと考えてきたのです。だから「神頼みをしてご利益を……」と思ったこともなければ、一般的に「パワースポット」と呼ばれるような場所に行ったこともありませんでした。

 けれども、初めて訪れた熊野の地で、言葉では表せないような厳かさや静謐さ、その独特の空気に圧倒されるようにも感じ、まさに「力を与えてもらえるというのはこういうことか……」と思ったのです。

 参拝をして、九鬼家隆宮司からお話を伺うこともできました。熊野本宮大社の主祭神に仕える「八咫烏(やたがらす)」は、「導きの神」として、さまざまないわれや言い伝えがあるそうですが、僕が一番に心に残ったのは、「過去があるから現在があり、そして未来へと導かれる」ということでした。

 八咫烏は、日本サッカー協会のシンボルマークでもあり、この地には中田英寿さんや澤穂希さんをはじめ、今でも多くのサッカー選手が必勝祈願に訪れているそうです。

 そこで改めて、僕が今、ドイツでサッカーに打ち込めているのも、決して自分ひとりの力ではないと、思い知ることができました。サッカー界や日本代表の歴史にも思いを馳せ、先人たちが築き上げ、受け継がれてきたものに対して、尊敬と感謝の気持ちを抱いています。

 人との出会いも、僕のパワーとなっています。九鬼宮司がしたためた「励」の一文字を胸にしっかりと刻み、未来への一歩を踏み出すため、折り目正しく励み続けよう、強烈な努力を続けていこうと、思いを新たにしています。

AERA 2017年6月26日号


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