日経平均は2万円台を回復した後、1万9千円台で小刻みな動きに終始する場面が増えている (c)朝日新聞社
日経平均は2万円台を回復した後、1万9千円台で小刻みな動きに終始する場面が増えている (c)朝日新聞社

 6月2日に終値で2万円を突破した日経平均株価。実に2015年12月以来、1年半ぶりの明るい話題に市場は歓喜したが、勢いはなかなか続かない。

 大手証券会社の幹部が言う。

「日本の実体経済は政府が強調するほどいいとは見ていない。企業業績が予想ほど上がらず、期待が失望に変われば外国人投資家に支配された日本株はつるべ落としとなりかねない」

 フランスの大統領選でマクロン氏が勝利し、市場が懸念していた政治リスクが払拭されたのを契機にリスク・オンへと転じた世界の株式市場。

●最大のリスクは…

 日経平均2万円回復は、日本株の売買の7割のシェアを持つ海外投資家が原動力となった。予想PER(株価収益率)が約14倍と低水準にある日本株の割安感も海外投資家を惹きつけた。PERとは、株価が1株当たりの純利益の何倍かを示すもの。数値が低いほど割安といえる。

 さらに、「下げに転じても日銀のETF(上場投資信託)の買いが入るという安心感も寄与している」(市場関係者)という。日銀をはじめとする世界の中央銀行が供給する過剰なマネーが株価上昇を支えている構図だ。

 だが、いつまたリスク・オフへと転じるかわからない危うさを秘めているという。

「最大のリスクは、支持率が急低下しているトランプ米大統領だ。減税など経済界が期待する政策が停滞しトランポノミクスが失望に変われば頼みの米国株が変調しかねない。さらに、チャイナリスクも底流にある。人民元安に伴う資本流出に悩む中国だが、潜在的な不良債権の急増が懸念されている」(同)

 金融庁も金融機関の中国・新興国向け与信について注視している。「中国・新興国に拠点を有するメインの大口与信先に関する調査を2月に実施し、結果の分析を行っている」(金融庁関係者)という。

●貯まる巨額なマネー

 金融庁の問題意識は、金融機関の取引先の中に、国内市場の縮小を受け、海外に活路を見いだそうと中国・新興国に進出する企業が増加している点にある。その一方で、メイン取引先の急速な海外進出に十分に対応できずに、与信管理が後手に回っている金融機関もあるのではないかと見られている。その実態把握に乗り出したわけだ。

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