だが、需給が大きく狂えば、融資は不良債権化しかねない。日銀が地銀等と信用金庫を対象に16年9月中旬~10月中旬に行ったアンケート調査では、貸家業向け貸し出しのリスク管理として、周辺の家賃相場を調査していたのは42%、周辺物件の入居率を調査したのは32%、人口動態を踏まえた需給動向を調査したのはわずか24%という。
これがきっかけとなり、サブプライムローン問題のような事態を招きうるのか。
日本不動産研究所不動産エコノミストの吉野薫さん(39)は、
「アパートは新築の間は入居者を獲得しやすく、問題はじわじわとしか顕在化しない。一方で地方金融機関の体力を徐々に失わせ、金融システムの安定性に悪影響を及ぼしかねない」
とし、こう指摘する。
「当事者間のコミュニケーションが正しくなかったために、ひずみが出てきている」
事実、契約を巡る業者とオーナーのトラブルは後を絶たない。愛知県の男性(80)は2月、サブリース大手のレオパレス21(東京都中野区)を相手に訴訟を提起。男性によれば、家賃収入は10年間不変と契約書にはあり、30年間は賃料を減額しないと説明も受けて建てたという。ところが、6年後に業績悪化を理由に減額。業績回復後も賃料が戻らないため、差額分の支払いを求めている。
●トラブル急増の可能性
この件を同社の宮尾文也取締役(57)に尋ねると、「リーマン・ショックで家賃相場が崩れ、男性の同意を得て賃料を見直した。近隣の相場と比較しても妥当な家賃と考えている」とする。一部オーナーでつくるLPオーナー会(名古屋市)の前田和彦代表(61)によると、契約書に賃料10年間不変とあるのに10年未満で減額となった会員は1千人以上おり、「そのうち100人ほどで全国で訴訟を起こすことも検討中」と話す。
水面下でカウントダウンが進むこの問題。サブリース被害対策弁護団長の三浦直樹弁護士(52)は、こう警告する。
「この問題は時限爆弾のようなところがあり、建築後しばらくの経営は順調で、オーナーはトラブルだと認識しない。アパート融資が増えており、今後トラブルが増える可能性は、高い」
(編集部・山口亮子)
※AERA 2017年5月29日号