IさんとNさん夫婦は共働き。娘を保育園まで送ることと、食後の食器洗いは夫のIさんが担当。時短勤務で働くNさんがお迎えや食事の用意、洗濯などその他の家事を担当している。

「実は、ぼくは家事スキルが低いんです。『やらなきゃ』とは思うんですけれど、どうしても体が動かない」と、Iさんは打ち明ける。

「家事をやっていないことに対して負い目を持っています。だから基本的には妻の言うとおりにしています。家の中で女性に逆らうのは、不利でしかないですから」

 自分が苦手な分野をカバーしてくれるからこそ、妻に対するリスペクトは忘れない。毎週水曜日、会社に頼んで出退勤時間を1時間早めてもらいお迎えに行き、父娘で夕食を食べ、寝かしつける。その間、妻のNさんは、友人と食事に行ったり、映画を見たり。自分の時間を過ごすという。

●野球型よりサッカー

 週に1度の「パパの日」は、Iさんが自ら提案。今では、家事や育児を楽しんでいる。そんな夫を、妻のNさんも頼りに感じているようだが、本当はもっと完全に五分五分に負担してほしいのではないか──。

「私はおおざっぱなので、家事に関しては大体でいいかな、という感じ。彼は細かいところが気になるタイプなので、そういうところはやってくれています」(Nさん)

 Nさんなりの納得感があるようだ。お互いをリスペクトし、柔軟に家事を分担しているIさん夫妻。博報堂生活総合研究所の夏山明美さんは、家事分担は「野球型でなく、サッカー型にするとよい」とアドバイスする。

「分担をきっちり決めてしまうと、そこで役割が生まれてお互いにしんどい思いをしてしまう。役割を決めず、フリーフォーメーションで家事をするというやり方がいいんじゃないかと思います」

(編集部・市岡ひかり、柳堀栄子)

AERA 2017年3月20日号