展覧会初日、それも朝一番で来たのにはわけがある。

「この日を待ちに待っていて、昨夜はうれしくて眠れなかったくらい。だって、世界の草間の展覧会を自分の住む東京で見られる。ぜいたくじゃないですか」

●草間愛を感じる構成

 こうして展覧会初日が開いた。昼近くになると、今度はグッズを入れた大きな袋を抱えた行列組が、続々と門から出てきた。

「あの天才的な色使いで、草間さんはキルター(キルトをする人)の間でカリスマ的人気があるんですよ」 

 と教えてくれたのは、東京・世田谷でキルト教室を開いているという50代の女性だ。展覧会、どうでした?

「初期作品で、今まで知らなかった草間さんの一面が垣間見えて、感動でした。年代順に見ていくと、暗闇を抜けて、カラフルな作品に爆発していくさまが手に取るようにわかるドラマチックな構成。どなたが考えたのかしら。熱い草間愛を感じますよね」

 はい。聞いてきました。

 中心になってキュレーションを手がけたのは、国立新美術館の南雄介副館長。草間作品との出合いは、98年にさかのぼる。南さんが東京都現代美術館の開館準備室で働いていた時代のことだ。

 収蔵作品を検討するうちに出合ったのが、今回も出品されている草間の巨大なペインティング「一億光年の星屑」だった。60~70年代の草間作品はもちろん知っていた南さんだが、初めて新作の前に立って、ある衝撃を受けたという。

「以前の作品にはなかった、新しい時代のスタイルが作品に強く表れていて、草間さんはどんどん更新されているんだと感じた。新作と同時に、時代によって更新されてきた草間作品の軌跡も見てもらいたい。今回の展示にはそんな思いを込めました」

 こうして、過去の作品と現在進行形のシリーズ「わが永遠の魂」の割合がほぼ半々という構成に。ちなみに、いまも日々描かれて点数を増殖させる「わが永遠の魂」シリーズ数百点のなかから132点を選び、会場でどう並べるかを中心になってプランニングしたのも南さんだ。

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