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東浩紀「こじれる築地市場の豊洲移転 石原慎太郎はスケープゴート?」

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築地市場

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 築地市場の豊洲移転問題が「炎上」し続けている。

 現在の焦点は、膨大な土壌汚染対策費用がかかる豊洲の土地を購入したことが正当だったか否かである。

 購入時に知事を務めていた石原慎太郎氏が、3月3日に会見を開いた。氏は、購入手続きは正当だった、もしそれが不当ならば都民全体の責任だと述べる。この説明はスジが通っている。行政の長は住民意思の代行者にすぎない。背任があったならともかく、手続きに則った決定について個人に結果責任を問うのは不当である。にもかかわらず、各紙は石原非難を強めている。なんとも奇妙な事態だが、背後には都民とメディアの「罪悪感」があるのではないか。

 そもそもこの問題は不必要にこじれている。豊洲に土壌汚染があり費用がかかることは以前から知られていた。移転反対を叫ぶ業者がいることも知られていた。それでも築地の老朽化があまりにひどく、ほかに案もないので豊洲移転しかないというのが、昨年の都知事選時点での都民の消極的な合意だったはずだ。以後も決定的な新事実が出てきたわけではない。にもかかわらず、いまや移転は政治的に困難になっている。この状況を作りあげたのは、「小池劇場」を煽ったメディアであり、喝采に酔い痴れた都民である。結果として残ったのは、移転延期に伴う膨大な維持費・補償費と、にもかかわらずまったく改善されない食の安全だ。

 都民もメディアもさすがに後悔し始めているのだろう。しかし自分たちの失敗を認めるわけにもいかず、そこで無意識に求めたのが、石原慎太郎という格好のスケープゴートだったのではないか。もし氏が会見で「おれがすべて悪かった」とさえ言っていれば、世論はくるりと反転し、いっきに事態は終結したのではないかと、そんな気もしないではない。けれども現実はそうならなかった。

 この問題には市場移転以外の解はない。厄介なのはそのためにスケープゴートが必要になってしまったことである。石原氏はその役割を拒否した。ではだれがその役割を担うのか。小池氏自身にならないことを切に願う。もう選挙はうんざりだ。

AERA 2017年3月20日号


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東浩紀

東浩紀(あずま・ひろき)/1971年、東京都生まれ。批評家・作家。株式会社ゲンロン代表。東京大学大学院博士課程修了。専門は現代思想、表象文化論、情報社会論。93年に批評家としてデビュー、東京工業大学特任教授、早稲田大学教授など歴任のうえ現職。著書に『動物化するポストモダン』『一般意志2・0』『観光客の哲学』など多数

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