「どんな立場の人が、どんな状況で使うべき言葉なのか、TPOまでは理解していなかったのでしょう」

 言葉のTPOを理解することは、文法を正しく使ったり、ネイティブらしい発音をしたりすることよりも大事なことだ、と川合さんは指摘する。意図していない印象を相手に与えてしまうことは、コミュニケーションとして致命的。黙っているほうがまし、ということにもなりかねない。

 その意味では、ネガティブな意味を持つ単語は日本人が思っているよりも、強い意味である場合が多いという。

「stupid(愚かな)やfat(太っている)、ugly(醜い)などは、かなり強いニュアンス。日本人は謙遜して身内を表現するのに使ったりしますが、聞いた相手はかなりどきっとします」

 では、どうしたらよいのか。

 対義語を思い浮かべて、その前に「not so」をつけるのが川合流。「not so clever(あまり賢くない)」「not so slim(あまり痩せてはいない)」「not so attractive(あまり魅力的ではない)」といった具合に和らげることができて、角が立たない。

 川合さんの感覚では、「OK」や「so-so」も、ネガティブ寄りの言葉だという。

 可でも不可でもない、ニュートラルな意味のつもりで使っている人が多いが、「OK」はどちらかというと「イマイチ」のニュアンス。「How are you?」に「I’m OK.」と答えると、逆に心配されてしまうこともある。日本人の考える「OK」を伝えるときに使うべきなのは、むしろ「good」だという。

「英語ではダイレクトに話すべきだと思っている人が多いようですが、それは迷信です(笑)。英語も日本語と同じくらいデリケート。言いたいことが言えた、通じた、というところで満足せずに、通じたその先で、相手がどう反応しているか、微妙な表情をしていないか、観察する。それが『惜しい』英語から脱却するきっかけになります」

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