●同じことを言いたい

 日常会話からビジネス英語まで、広く英語を教えている石原真弓さんは、近著『石原真弓の大人のためのゆっくり学ぶ英語教室』(小学館)で、「いただきます」「おかえりなさい」「ビール党です」など、言えそうで言えない表現を多く取り上げた。

「英語を教えていると『これって英語でどう言うんですか?』と聞かれることがよくあります。答えを言うと『そんな簡単なことでいいんですか』ってみなさんおっしゃるんです」

 英語を使う状況でも、日本語のときと同じタイミングで同じことを言わないと居心地が悪いと感じる人が多いのだが、その感覚が「惜しい!」。

 最たるものが「いただきます」だろう。欧米では何も言わずに食べ始める人も多い。気になるなら代わりに「おいしそう」と言ってもいい。「おかえりなさい」なら「今日はどんな一日だった?」でどうだろう。

 ビジネスの場でも同じで、日本語の「よろしく」はさまざまな意味で使える万能表現だが、英語でこれにぴったりあてはまる表現はない。

 初めて出会ったときの「よろしく」、仕事をともにするかもしれない人との出会いの場面での「よろしく」、「今後ともよろしくお願いします」の意味の「よろしく」には、それぞれ適した英語表現がある。

 直訳しにくい表現に出くわしたときは、なるべく気持ちをストレートに表現するのがよい。石原さんが日本人の英語で特に「惜しい!」と感じているのが「sorry」の多用だ。

 授業で何か読んでいるときにつっかえたり、プレゼンで言い間違えたりしたときに、反射的に「Oh, sorry.」と言う人が実に多い。

「悪くないのにsorryと言われるのは、ネイティブにはかなり違和感があります。sorryを使うのは、相手の名前を間違えたり話を遮ったり、謝る必要があるときだけでいいんです」

 使える表現に幅がなく、いつも同じ言い回しばかりになってしまうのも、初中級者にありがちな「惜しい!」。そんなときはまず、あいづちからバリエーションを増やしてみるといい。

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