「当事者たちからは、『つながりたい』という欲求も感じます。現実で生きづらさを感じているために、ネットに依存していることも考えられる。ADHDなど発達障害を抱える当事者も多くいます」(同)

 親にとっては「たかがゲーム」だが、本人にとっては、自己肯定感を得られる大切な世界。奪われそうになれば、抵抗し、暴言や暴力が出ることもある──。

 ネット依存に陥った青少年を、依存から回復させるためには、どうすればよいのか。

 現代社会では、ネットを断って生きることは困難だ。適切な使い方を身につけるほかない。

「ポイントは『本人の気づき』です。いかにネットを使わない時間を増やし、健康的な活動を取り戻していけるか。医療者や家族と信頼関係を築き、ネット以外の世界への興味を取り戻していけば、スムーズにオンラインの時間を減らしていけるはずです」(同)

 久里浜医療センターでは、ネット依存のメリットやデメリットを書き出したり、認知行動療法の一環として、当事者同士でディスカッションを行ったりといった取り組みを行っている。

 運動、認知行動療法、専門家によるレクチャー、ミーティングを行うNIP(New Identity Program)という、週2回の独自のプログラムもある。また、若者のネット依存が深刻化している韓国で実践されているプログラム「レスキュースクール」にならい、国立青少年教育振興機構と共同で、8泊9日のキャンプも実施した。

●親子間の対話が大切

 一方で、家族が当事者にどう対応すればよいかの提案も行っている。

「家族が必死になる気持ちもわかりますが、本人との話し合いを続け、お互いを理解していくにはどうすればいいかを考え、働きかけることです」(同)

 ネット依存の専門外来を設けている大石クリニックの大石雅之院長はこう語る。

「大学生や社会人なら自分から受診するケースもありますが、中高生は親御さんに連れられ、望まずに受診する場合がほとんど。だからこそ、親子間の対話が大切です」

 大石クリニックでは、当事者と親、両方のミーティングを開催し、アプローチしている。

 臨床心理士の菅野真由香さんは、当事者が「現実に居場所がない」と感じている場合、問題が長期化しやすいと指摘する。

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