テーマどおり、上映作では多種多様な「信じる人」たちが描かれる。その姿は映像美とともに目に焼き付くと同時に、私たちにある問いを投げかける。あなたは何を信じているのか、と。

「『僕の中の宗教』があることに、気づかされた」と振り返るのはゼミ生の小波津(こはつ)龍平さん(29)だ。

 特定の宗教は信じていないつもりの自分が、信じているものは一体何なのか。それが自分自身の行動を決めているのではないか、と。別のゼミ生も言う。

「人は何かを信じなくては生きていけないのかもしれない、と思いました。みんな何かしらを信じていて、それが人なのか宗教なのか家族なのか、対象が違うだけ」(原知亜紀さん=22)

「信じることとは、つまり、その人がどのように生きていくのかそのものなのだと感じました」(中島彰子さん=35)

●なぜ信じるか答えまだ

 映画祭の準備を始めた4月からの9カ月間は、学生たちにとって自らを「信じる人」として振り返る期間となった。宗教という壁を前にして思考停止するのではなく、その向こう側に目を向けることの大切さに気づかされた。木村さんが言う。
「人はなぜ信じるのか。映画祭は終わりましたが、正直、その答えはまだわかりません。むしろ謎が深まった。今後もずっと考え続けていきたいです」

 来場者にはリピーターも多かった。複数の作品同士の化学反応を楽しむことも映画祭の楽しみのひとつ。彼らの選んだラインアップから、宗教について考えるきっかけをもらってみてはどうだろう。(編集部・高橋有紀)

AERA 2017年1月16日号