コーチのオーサーは「いまの演技は骨組みだけ。これから肉付けしないといけないし、結弦にはそれができる」/10月28日、スケートカナダでのSP (c)朝日新聞社
コーチのオーサーは「いまの演技は骨組みだけ。これから肉付けしないといけないし、結弦にはそれができる」/10月28日、スケートカナダでのSP (c)朝日新聞社

 挑戦して失敗し、そこから学んで成長する。羽生結弦は常にこうして進化してきた。GPシリーズ初戦での失敗も成長の端緒。進化が難しい時代にも、「強気」を崩さない。

「悔しさ9割、達成感1割」

 10月29日、グランプリ(GP)シリーズのスケートカナダでフリーの演技を終えて、羽生結弦(21)は自らの感情をこう言い表した。

 自身にとって、今季GP初戦。失敗ジャンプが多く、2位に終わった。9月30日のオータム・クラシック(カナダ)で、国際スケート連盟公認大会で史上初めて成功させた4回転ループにショートプログラム(SP)でもフリーでも挑んだが、SPでは軸が傾きすぎて着氷でひざを突いた。

「跳んだ瞬間に『ああーっ』と思って。痛い転び方をするなと思っちゃって、途中で本能的に(引き締めていた腕を)開いちゃいました」

●光がちょっと見えた

 続く4回転サルコウは3回転になり、フリーの4回転ループでもひざを突いて、後半の4回転サルコウは2回転に。

 昨季は2種類で3度だったフリーの4回転を、今季は3種類で4度跳ぶ構成にした。そのうち二つは後半に跳ぶうえ、4回転サルコウには3回転をつけて連続ジャンプにしている。大技・4回転ループも、跳ぶ直前まで複雑な動きを組み込んでいる。

 2年前までは4回転で最も簡単なトーループさえ、男子全体で成功率が高いとはいえなかった。いま、男子のレベルアップは著しい。羽生は4回転トーループを今季のスケートカナダではフリー後半に入れ、やすやすと回りきって着氷した。その前に4回転を2度も失敗。体力をかなり消耗した状態での成功だ。

「後半に4回転を跳べたのは大きな収穫」(羽生)

 昨年12月の全日本選手権前に左足甲あたりのリスフラン関節靱帯を痛めた。今年3月から4月にかけてあった世界選手権後、悪化した患部を癒やすために2カ月間、滑らなかった。それを踏まえれば、上々のスタートだろう。羽生も、

「光がちょっと見えたかなと思います。僕にしては初戦でここまで希望が見えたのは珍しい」

 と明るかった。

●4回転競争でけが続出

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