朝の通勤ラッシュ時のJR鶴橋駅(大阪市、1999年) (c)朝日新聞社
朝の通勤ラッシュ時のJR鶴橋駅(大阪市、1999年) (c)朝日新聞社
従来型(奥)と比べ、ドア幅が50センチ広くなった東京メトロ東西線の「15000系」車両(東京都江東区、2010年) (c)朝日新聞社
従来型(奥)と比べ、ドア幅が50センチ広くなった東京メトロ東西線の「15000系」車両(東京都江東区、2010年) (c)朝日新聞社
阿部等(あべ・ひとし)/著書『満員電車がなくなる日』は、10月に戎光祥出版から改訂版が発売予定(撮影/編集部・福井洋平)
阿部等(あべ・ひとし)/著書『満員電車がなくなる日』は、10月に戎光祥出版から改訂版が発売予定(撮影/編集部・福井洋平)

 満員電車をゼロへ──。

 8月に新都知事となった小池百合子氏が打ち出した公約だ。

 この公約のアイデアを提供したのは、元JR東日本社員で交通コンサルティング会社ライトレール社長の阿部等(ひとし)さんだ。小池氏はかつて「満員電車に乗りたくないから、カイロ大学に留学して通訳を志した」と阿部さんに語ったという。

●都知事公約で現実味

 経路検索アプリ「NAVITIME」では今年4月から、首都圏54路線、720駅を対象に表示された列車ごとの混雑度を6段階で表示する(朝ラッシュ時のみ)「電車混雑予測」サービスを導入した。開発スタッフが実際に列車を見て混雑度を13段階で調査。公表データを加えて解析し、混雑度をはじき出している。今回AERAでは、列車種別ごとの平均値で混雑度「12(押し込まないと入れない)」~「13(車両に入りきらない)」と判断された区間をリスト化した。特に、郊外から都心部に入る路線の混雑度が異常に高いことがわかる。線路の複々線化や列車の長編成化など鉄道会社も方策を講じているが、満員電車を「ゼロ」にすることは本当に可能なのか。

 方法の一つが、小池知事が公約に掲げた「2階建通勤電車の導入促進」だ。JRの中距離路線に連結されているグリーン車の2階建て車両は、扉が片側二つしかなく、乗降時間が長くかかる。阿部さんが提案する総2階建て車両は、1階と2階それぞれに扉があり、駅のホームも2階建てとし、乗降時間は延びずに乗れる人数が倍になる。交差する道路などを改築せず地下鉄にも導入できるよう、架線とパンタグラフをなくす技術的工夫をする。

「輸送力を増やすために新線を建設するコストの数分の1。終電と始発電車の間に工事を進め、一定区間が完成した時点で線路を切り換えることを繰り返す」

●青信号と同時に出発

 阿部さんはさらに少ない費用での満員電車ゼロプランとして、「運転間隔を縮めて列車を増発する」ための5方策を提案する。

著者プロフィールを見る
福井洋平

福井洋平

2001年朝日新聞社に入社。週刊朝日、青森総局、AERA、AERAムック教育、ジュニア編集部などを経て2023年「あさがくナビ」編集長に就任。「就活ニュースペーパー」で就活生の役に立つ情報を発信中。

福井洋平の記事一覧はこちら
次のページ