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炎天下の東京五輪マラソン、史上最も過酷で最大難所は“四谷”

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田茂井治AERA#東京五輪

解説者・金哲彦さんのマラソンコース分析(1) 新国立競技場:メインスタジアムの隣は明治神宮外苑。生い茂る緑に囲まれていることもあって、体感温度は低い(撮影/小暮誠)

解説者・金哲彦さんのマラソンコース分析(1) 新国立競技場:メインスタジアムの隣は明治神宮外苑。生い茂る緑に囲まれていることもあって、体感温度は低い(撮影/小暮誠)

解説者・金哲彦さんのマラソンコース分析(2) 四谷:復路では四ツ谷駅前と四谷三丁目駅を結ぶ新宿通りが上り坂となる。ここがレース最大の難所と予想される(撮影/小暮誠)

解説者・金哲彦さんのマラソンコース分析(2) 四谷:復路では四ツ谷駅前と四谷三丁目駅を結ぶ新宿通りが上り坂となる。ここがレース最大の難所と予想される(撮影/小暮誠)

解説者・金哲彦さんのマラソンコース分析(3) 皇居周辺:お堀の水があるものの体感温度は高め。ビル等の遮蔽物がないため、日陰はなし。炎天下では帽子が必須に(撮影/小暮誠)

解説者・金哲彦さんのマラソンコース分析(3) 皇居周辺:お堀の水があるものの体感温度は高め。ビル等の遮蔽物がないため、日陰はなし。炎天下では帽子が必須に(撮影/小暮誠)

解説者・金哲彦さんのマラソンコース分析(4) 浅草:観光地なだけに、多くの観戦者でごった返す可能性が。選手よりも観戦者の健康管理が求められるスポット(撮影/小暮誠)

解説者・金哲彦さんのマラソンコース分析(4) 浅草:観光地なだけに、多くの観戦者でごった返す可能性が。選手よりも観戦者の健康管理が求められるスポット(撮影/小暮誠)

解説者・金哲彦さんのマラソンコース分析(5) 日本橋:高層ビルが立ち並ぶため、朝方は日陰ができやすい。午後はビルの空調の排気で気温上昇は必至(撮影/小暮誠)

解説者・金哲彦さんのマラソンコース分析(5) 日本橋:高層ビルが立ち並ぶため、朝方は日陰ができやすい。午後はビルの空調の排気で気温上昇は必至(撮影/小暮誠)

解説者・金哲彦さんのマラソンコース分析(6) 東京タワー:復路では増上寺の後方に東京タワーを望むことができる。街路樹が並ぶものの、日陰は少ないエリア(撮影/小暮誠)

解説者・金哲彦さんのマラソンコース分析(6) 東京タワー:復路では増上寺の後方に東京タワーを望むことができる。街路樹が並ぶものの、日陰は少ないエリア(撮影/小暮誠)


金哲彦(きん・てつひこ)/1964年、福岡県生まれ。小出義雄監督率いるリクルート・ランニングクラブのコーチとして数々の五輪選手を指導。マラソン解説者としても活躍(撮影/小暮誠)

金哲彦(きん・てつひこ)/1964年、福岡県生まれ。小出義雄監督率いるリクルート・ランニングクラブのコーチとして数々の五輪選手を指導。マラソン解説者としても活躍(撮影/小暮誠)

 猛暑が直撃すること必至の2020東京五輪。五輪史上最も過酷なレースとなりかねないマラソンのコースを金哲彦氏と最速チェック!

 夏本番。連日、全国各地で35度を超える猛暑日を記録している。3連休の最終日となった7月18日には、500人以上が熱中症とみられる症状で救急搬送。1人が意識不明の状態で発見され、命を落とした。

 そんな酷暑にあえぐ日本で、かねて危惧されている夏の祭典がある。ご存じ、2020年の東京五輪だ。7月24日から8月9日の開催期間は、夏真っ盛り。猛暑が選手たちを直撃するのは必至だ。なかでも危険視されているのが、炎天下の路上を走らされることになるマラソン。プロランニングコーチで陸上競技・駅伝解説者の金哲彦氏は、次のように警鐘を鳴らす。

「スタジアム内での競技は屋根や芝などで暑さを軽減できますが、ロードレースは対策が難しい。多くの棄権者を出す可能性もあります」

●夏季五輪は棄権者続出

 過去、五輪は何度も暑さと闘ってきた。04年のアテネ五輪では、暑さを避けるためにスタート時間を夕刻18時に設定。それでもスタート時の気温は女子マラソンが35度、男子が32度という暑さだったことから、途中棄権する選手が続出。金メダルを獲得した野口みずき選手でさえも、ゴール直後に嘔吐した。

 続く08年の北京五輪でも、スタート時間を朝7時半に設定。それでも男子マラソンの後半戦では気温が29度に達し、5人に1人が途中棄権する過酷なレースとなったのだ。

 近年の東京の気温はどうか? 13年から15年の8月の平均気温は26~29度台。最高気温は13年に38.3度を記録している。東京五輪の女子マラソンが予定されている8月2日に絞れば、その平均気温は14年、15年ともに30度以上。アテネ五輪に迫る過酷な環境でレースが実施される可能性が濃厚なのだ。が、マラソンランナーたちを襲うのは、酷暑だけではない。

「実は、暑さ以上に体を蝕むのは湿気。70~80%を超えてくると、汗の水分が気化せず、体温を下げられなくなる。また、空気中の水分が熱を媒介してしまうため、日陰の温度も上昇します」(金氏)

 最悪のケースは昨年1月に開催された第19回スタンダード・チャータード香港国際マラソンで見られた。当日は気温17度で、湿度84%。涼しい気候ではあったが、その高い湿度と大気汚染指数の高さも相まって、途中棄権が続出。10キロマラソンに参加した24歳の男性はゴール手前数百メートルの地点で倒れ、そのまま息を引き取ったのだ。

「高温多湿の環境下でのマラソンは熱中症や脱水症状、熱射病などのリスクが付きまとう。水だけ取りすぎても塩分が足りず、低ナトリウム血症に陥ることもある。これらの症状が悪化すると、体温コントロールが利かなくなり、筋肉のけいれんやめまいを引き起こし、意識が朦朧となって走れなくなるのです」(金氏)

●五輪史上最悪の環境

 現在、東京五輪のマラソンのスタート時刻は7時半と予想されている。13~15年の8月2日の同時刻の気温は23~29度台。日中と比較すれば、幾分“涼しい”時間帯であることは間違いない。だが、湿度は朝方ほど高い傾向にある。昨年8月2日7時の湿度は83%。東京五輪の男子マラソンが予定されている8月9日も昨年の7時は72%。アテネの8月の平均湿度が40%台であることを考えれば、アテネを超える、五輪史上最悪の環境でレースが開催されることになる可能性は非常に高い。

 一体、ランナーたちはどんなレースを強いられることになるのか? 7月某日、金氏の協力を得てコースの下見を行った。

 すでに発表されているコース案によると、新国立競技場をスタートした選手たちは四谷、飯田橋と北上した後、南下して皇居前を通過。東京タワーから再び北上し、銀座・中央通りを抜けて浅草で折り返した後、同じルートをたどって新国立競技場を目指す。

 7時半スタートならば、折り返し地点到達が8時半頃。その時刻に合わせて、浅草・浅草寺を訪れると、気温は早くも30度に達していた。気象庁によると同時刻の湿度は59%。照りつける日差しに、金氏は「レース当日、帽子とサングラスは必需品ですね」と漏らした。

●体感温度高い皇居周辺

 復路をたどる道中、金氏がしきりにチェックしていたのは、コースを取り巻く環境だ。


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