ナイアンティック社は、もとは米グーグルの社内ベンチャー。ポケモンの権利関係を管理している株式会社ポケモン(任天堂が32%を出資)、任天堂、そしてグーグルから最大3千万ドルの出資を受けている。ポケモンGOは4社の共同プロジェクトだ。

 なぜこの4社が手を組んだのか。川崎氏は「思惑が一致したから」との見方を示す。

「据え置き型ゲームの低迷が続いていた任天堂は、DeNAと提携し、スマホゲームへ軸足をシフトしていました。また、豊富なキャラクターを活用したライセンスビジネスも戦略として据えていた。一方、ナイアンティック社も、イングレスの世界観を引き継いだ新ゲームを求めていた。そんな両者の思惑が一致したのではないでしょうか」

●グーグルの世界戦略?

 対して、「すべてはグーグルが描いた世界戦略の一環」と見ているのは、SBI証券投資調査部・シニアマーケットアナリストの藤本誠之氏だ。

「ナイアンティック社を率いるジョン・ハンケCEOは、グーグルアースやグーグルマップ、ストリートビューを手掛けてきた人物。ポケモンGOで遊ぶ際のGPS情報や、撮影した写真情報などを取得することで、世界中のビッグデータを入手できる。マーケティングのための情報や、グーグルが行けない場所でも世界中のユーザーがデータを送ってくれるというわけです。この大流行も、すべてはグーグルが事前に描いていた戦略のうちだと思います」

 7月中にはスマホと連動してポケモンが近くにいることを知らせてくれるデバイス「ポケモンGOプラス」も発売予定だ。

「任天堂はマリオ、ゼルダ、ドンキーコングなど、人気のコンテンツを抱えています。今秋には『どうぶつの森』などスマホ向けゲームを4タイトル相次いで投入する予定です。今回のポケモンGOの大ヒットを受け、どうぶつを捕まえる“どうぶつの森GO”なんてものも登場するかもしれません」(永濱氏)

 世界的な“ポケモンGO旋風”はやみそうにない。(ライター・景山薫)

AERA 2016年8月1日号