4代目社長の大木代吉さんは、淡麗な味わいの純米酒が好評だったことから、その姉妹品として甘口の純米酒を発売した。しかしまったく売れず、在庫の山に。ところが、大木さんの妻がこの酒を料理に使ってみると、料理の味がぐんとおいしくなることに気づいた。

 そこで、料理酒としての活用に目をつけた。1972年、新潟県の食品メーカー「加島屋」に納入。食品や総菜に料理酒を使ってもらったところ、化学調味料を使わなくても深いコクやうまみが出せると評判を呼んだ。92年に「こんにちは料理酒」と名前を変えて発売すると、徐々に販売先が広がり、今ではすし店などの飲食店のほか、健康志向や本物志向の消費者にも愛用されている。5代目の大木雄太・現社長は、食品を長持ちさせる効果もある、とPRする。

ゴキブリ逃げた → おそうじアイテム
<ニトムズ「コロコロ」>

 日用品の便利グッズで知られるニトムズは、日東電工から独立して設立された1975年からまもなく、「ゴキ逮捕」というゴキブリ捕獲商品を発売した。ハエたたき棒の先端に粘着剤をつけたような形で、テレビCMを流して大々的にPRした。ところが、これが失敗。発売すると、ゴキブリの動きが速すぎて捕まえられないと、消費者に受け入れられなかったのだ。

 その後、ある日のこと、社内の倉庫で、女性社員が粘着テープで服のほこりをとっていた。それを見た社員が、ひらめく。ほこりなら、ゴキブリのように速く逃げない。ゴキ逮捕の失敗から、「徹底的に生活者の視点に立って商品を作るべし」との教訓を得たニトムズは、テープの色など細かな点までこだわり、新たな掃除用品「粘着カーペットクリーナー」を83年に発売した。すぐ評判になり、「あのコロコロするやつをください」と買い求める客が多かったことから、85年に「コロコロ」と改名。現在までに本体は累計4300万本、スペアテープは4億個を売り上げている。

■箱が足りない → 焼きたて鉄板陳列
<BAKE CHEESE TARTのチーズタルト>

 2014年、東京・新宿に1号店をオープンして以降、国内外に店舗を増やし急成長しているチーズタルト専門店「BAKE CHEESE TART」。ここでは、焼きたてのチーズタルトが鉄板の上に、ずらりと店先に並べられる。ライブ感ある独特の販売スタイルは、実はあるミスがきっかけで生まれた。

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