発達障害の作家・市川拓司さんが語る「『違い』は武器になる」

2016/06/13 11:30

 作風が女々しいとか、お涙ちょうだいとか批判されることもあった。けれども、僕が「そうそう。ピッタリ、ピッタリ!」っていう調子だと、相手も暖簾に腕押しみたいで調子が狂うみたい。

 特性を生かすコツは、自分の視点を大事にし、ユーモアのチャンネルに変換することだという。

 自分を笑い飛ばせるような諧謔性があると、自分が背負う過酷な状況も力強さに昇華できたりするんだよね。僕は小学校高学年の時に、「愛されるバカ」のポジションを狙おうと思った。僕がどんなエラーをしても「想定内」になる。「なんだ。市川じゃしょうがねえな」と。

●最強のひきこもりに

 同調圧力っていうのかな。そういうのが強い国では、発達障害の子がスポイルされて、大人になる頃にはすっかり元気をなくしちゃう可能性はある。人から「間違っている」と言われ続けても、個人への攻撃と受け取らないほうがいい。マジョリティーには立ち向かわなくてもいいから、傷つく前に逃げちゃえと。もし孤独感を感じているような人がいたら、そう伝えたい。

 ひきこもってもいいと思う。なにせ僕もひきこもりです。家の中には僕が大好きな観葉植物やらシダやらがびっしりで、ジャングル状態です。外でつるみもせず、一直線に家に帰り、ひたすら精魂こめて自分の好きな場所をつくり、好きなことをする。流行も関係ない。僕は自分のことをテナガザルだと思っています。好きな緑に囲まれて、テナガザルの僕としての人生物語を刻んでいこうと。ただ、どうせひきこもるならゴージャスに行こうぜって。僕は、史上最強のひきこもりになってやろうと思っているところです。

(ライター・古川雅子)

※この記事はAERA5月23日号から5回にわたり連載している集中連載「発達障害と生きる」の第5回です
AERA 2016年6月20日号

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