そもそも誰が代表なのか。メンバーは何人いるのか。どんな政治的主張があるのか。活動を支える資金はどうやって集めているのか……。某大手新聞でさえ、SEALDsのバックには特定の政党が暗躍していると何度も「誤報」している。こうした「謎」の多くは、このドキュメンタリーでほぼ種明かしされていて痛快だ。

 何より見ていて前向きな気持ちになれるのは、全体を通じて若者が「明るく」描かれていることだろう。それはテレビの報道には決して映り込まない、彼らの青春そのものだ。対して絶望的に「暗い」のが政治の世界。国会のかけひきをめぐる政治家たちの言動は、隠微、恫喝的、明るさのかけらもない。

 戦後70年の8月15日。ある女子大生は、先の大戦の犠牲者を祀る千鳥ケ淵を訪れ手を合わせた。また、特攻隊で生き残った元予科練の兵士の言葉に、思わず涙をこらえきれなくなった男子学生もいた。

●解散前にもう一暴れ

 歴史を真っ正面から見据え、死者を内に生かして生きようとする若者が明るく、歴史を都合よく解釈し、死者を忘れ去った大人が暗い。スクリーンに交錯するこの「明暗」は、日本を覆っている政治に対する不信感そのもののように思えた。

 15年9月19日。安保法案が可決された日の明け方まで続いた国会前の抗議の様子がクライマックスだ。そこには、不思議と悲愴感など全くない。まるで新年を迎えた朝のようにすがすがしい顔の若者らがいた。

「いまにみとけよ」

 この夏、参議院選挙後にSEALDsは「解散」することを明言しているが、その前にもう一暴れすることを、すでに映画の中でも宣戦布告している。(ノンフィクション作家・中原一歩)

AERA  2016年5月30日号