重大な責任が妃に委譲されるのは、以前からくすぶる国民の希望にこたえて、次の国王をウィリアム王子(33)にする決断が下されたからではないかと推測される。王位継承を一世代飛ばすのは異例ではあるが、不可能ではない。これに対し皇太子は承諾したと言われる。

 皇太子は多くの慈善団体のパトロンを引き受けるが、本人が立ち上げた「プリンス・トラスト」が多くの起業家を生むなど評価が高い。加えて環境や建築など思い入れの強い活動を持続したい。国王につくと手が回らなくなるのではないか。それに60代後半といえば、一般的には第一線から次第に退く年齢だ。さらに王子への譲位は、息子への最後の償いとみなされる。皇太子が不倫に走らず元妃と仲睦まじい家庭を営んでいれば、元妃が36歳の若さで命を散らし、王子たちが早くに最愛の母を失うことはなかった。

 しかし収まらないのがカミラ夫人である。妃が前述のティアラを着用した時は「ダイアナ元妃のジュエリーを盗んだ」と大騒ぎしたという。夫人は妃に以前よりいじめまがいの言葉を吐き、悪い噂をまき散らしていた。しかし妃はジョージ王子(2)とシャーロット王女(0)の母となり、公務と子育ての両立に励み、夫婦仲がよく、抜群のファッションセンスで世界を魅了する。

 夫人はアンチエイジングの美容法を試し懸命に公務をこなすが、国民のダイアナ元妃への哀惜の念は消えず、人気は低迷したままだ。酒量は増し、酒癖の悪さに拍車がかかる。まもなく再婚11年を迎えるが、以前から別居状態だ。公務の際はともに行動することも多いが、週末には実家で子や孫たちと過ごす。(フリージャーナリスト・多賀幹子)

AERA  2016年3月28日号より抜粋