「アクティブラーニング」を実践しようとする学校現場や親に「戸惑い」が広がっていることも事実だ(※イメージ)
「アクティブラーニング」を実践しようとする学校現場や親に「戸惑い」が広がっていることも事実だ(※イメージ)

 一方的に教える授業ではなく、子どもたちの主体的に学ぶ姿勢を育てる「アクティブラーニング」(AL)。いま、ALに取り組むこと自体を否定する人は少ない。だが、実践しようとする学校現場や親に「戸惑い」が広がっていることも事実だ。

 教師は黒板に問題を示して、生徒たちに言った。

「自分たちで話し合って、考えてごらん」

 ALの手法のひとつとされる「学び合い」だ。

 ところがもともと私語が絶えない教室は、教師の言葉をきっかけにたちまち「おしゃべりの場」と化した。また、級友に教える立場になったある生徒は、教えるうちに自分がそのテーマを十分に理解していないことに気づいた。しかし、教師は「自分たちで考えなさい」の一点張り。わからない者同士がぼんやりと時間を過ごすことになった。

 舞台は、「大学入試が変わるから」と2015年にALを導入した首都圏の中堅私立中高一貫校。前出の生徒の母親は言う。

「ALは教師の上手な介入がないと成立しないと思う。学校はPRのために、時流にのってALを導入したのかな、と思ってしまいます」

 次の学習指導要領では小中学校にも導入される予定のALだが、具体的な指導法を示すものではない。あくまでも教育の「方向性」を示す抽象的な概念で、解釈はさまざま。先取りして成果を上げている学校も少なくないが、大方の教師や親は、「従来の『子どもたちの主体性を大事にする授業』とどう違うのか」「具体的には、どう教えればいいのか」という戸惑いや疑問を抱え、超えなければならない幾つもの課題を前に揺れている。

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