電車でよく見かける広告。実際の深見はボディービルで鍛えたという分厚い胸板と、おどけた口調が微妙にマッチした能弁な「教祖」だ(撮影/村上宗一郎)
電車でよく見かける広告。実際の深見はボディービルで鍛えたという分厚い胸板と、おどけた口調が微妙にマッチした能弁な「教祖」だ(撮影/村上宗一郎)

 新聞や電車で見かけるナンセンスギャグ満載の広告。必ず写っているのが太い眉毛と濃い顔で明後日の方角に視線を向ける男性「深見東州」だ。一体何者なのか。

 NPO法人「世界開発協力機構(WSD)」の総裁であり、神道系の宗教法人「ワールドメイト」(本部・静岡県伊豆の国市)を率いる存在でもある深見東州(本名・半田晴久)。

 深見を謎めいた存在にしているのは、年間500本を楽に超える、奇抜な広告の数々だろう。「進撃の阪神巨人ロックコンサート!!日本武道館」「街角にいる万能の天才 深見東州の音楽作品 モーツァルトやパヴァロッティに、“劣るとも勝らない”作曲力、歌唱力、作詞力」等々。広告の中身はコンサートやチャリティーイベント、書籍の宣伝など多岐にわたる。広告自体はワールドメイトとは関係ない。派手な広告展開はここ数年のことだが、「コスモコア」の名称で宗教団体を設立したのは1984年と活動歴は長い。

 全国紙国税担当記者によると、90年代初頭に現世肯定派の神道系新興宗教として台頭、東京国税局査察部が93年12月に査察に入り、関連会社に34億7800万円の課税処分を行った。このため当時計画していた静岡県への宗教法人認証手続きを断念したという。

「しかし、06年5月の東京高裁判決でこの処分の取り消しが確定した。分派活動の首謀者の偽情報に踊らされ、深見が税金逃れの隠れ蓑に宗教法人を設立しようとしていると疑った国税当局が、13年がかりで完敗したんです」(前出の記者)

 約20年の年月を経て改めて文科大臣所管の宗教法人の申請を出し、2012年に念願の宗教法人格を得たワールドメイトは会員数約7万5千人。月会費は正会員2500円、準会員1200円で年間の会費収入だけで、約10億円という。その宗教活動とはいったいどのようなものか。

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