クレーン車で転落現場から引き揚げられたバス。慢性的な運転手不足で、思った便数の運行ができない業者も多いという/長野県軽井沢町 (c)朝日新聞社
クレーン車で転落現場から引き揚げられたバス。慢性的な運転手不足で、思った便数の運行ができない業者も多いという/長野県軽井沢町 (c)朝日新聞社

 15人の命を奪った長野県軽井沢町の大型バス転落事故。「適正」な運賃とはどれぐらいかが、改めて問われている。

 1月15日未明に発生した事故では、2人の乗務員と13人の大学生の命が失われた。事故後、ツアー会社「キースツアー」(東京)がバス会社「イーエスピー」(同)に、国の基準額を大幅に下回る価格で発注したことや、イーエスピーが、法令で決められた運転手の健康管理を怠ったことなどが明らかになった。

 その後も東京都大田区で30人が乗った観光バスが事故を起こすなど、大きな事故が相次いだ。2012年に関越道で運転手の居眠りにより7人が死亡した高速ツアーバス事故も記憶に新しい。なぜ教訓を生かせないのか。

 汚いの代わりに契約社員、キツイ、危険と合わせて「3K」。高速バス運転手は、自らの業界をこう表現する。ある現役運転手(49)は漏らす。

「かつては年収1千万円に届く人もざらで、憧れの職業だったんですよ。でも、規制緩和で全てが変わってしまった」

 需給調整や安全性確保などを理由に、貸し切りバス業界に課されてきた参入規制が00年から許可制に緩和されると、業界全体の営業収入が減少する中で、業者数は倍増。インバウンド需要を商機とみて、異業種から参入する業者も増えた。運賃比較サイトの登場が追い打ちをかけ、価格競争は激化した。

 バスやタクシーの運転手らでつくる自交総連大阪地方連合会書記次長の松下末宏さん(62)は憤る。

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