「朝三暮四」を思わせるちぐはぐさに、効果を疑問視する声が出ている(※イメージ)
「朝三暮四」を思わせるちぐはぐさに、効果を疑問視する声が出ている(※イメージ)

 政府は今年度の補正予算案に、安倍首相の肝いりで、年金額が比較的低い高齢者に3万円を配ることを盛り込んだ。消費を刺激して「1億総活躍社会」を実現するというが、高齢者向けの施策は負担増や給付減が続いている。「朝三暮四」を思わせるちぐはぐさに、効果を疑問視する声が出ている。

 今回の補正予算案は、住民税が課税されていない65歳以上の約1100万人に、参院選前に「臨時福祉給付金」として3万円を支給するという。

 実は、消費増税対策には税率10%を想定した「年金生活者支援給付金」もある。国の年金を含めた所得が基礎年金の満額(年間77万円)以下の人に月5千円が支給され、年間87万円までは総所得の逆転が起きないよう、所得に応じて少しずつ少なくなる給付がある。対象者は計約600万人だ。

 今回の臨時給付金は、消費増税が2017年4月になったことで先送りされたこの制度を、安倍首相の意向で前倒しで実施するものとされる。現役世代の賃金上昇から取り残された年金受給者に支給することで景気刺激になるのだそうだ。

 しかし、対象者は約1100万人と約500万人も多い。住民税の非課税世帯が対象のためだ。その年収の目安は、65歳以上の1人世帯だと年金収入などが155万円程度、夫婦2人世帯だと211万円程度までに上がる。

 さらに毎月ではなく、「ワンショット(1回限り)」(厚生労働省)で3万円が配られ、所得逆転を防ぐ調整もない。

次のページ