難民支援協会に常備された保存食。資金がつき食事もとれない難民に、温かい食事を提供している。魚の缶詰、みそ汁、カップ麺など、ほとんどがハラル対応だ(撮影/編集部・竹下郁子)
難民支援協会に常備された保存食。資金がつき食事もとれない難民に、温かい食事を提供している。魚の缶詰、みそ汁、カップ麺など、ほとんどがハラル対応だ(撮影/編集部・竹下郁子)

 難民なんて自分には関係ない。そう思っている人も多いのではないか。人々を覆うこのムードそのものが、日本の難民支援の貧しさを物語っている。

 2015年12月7日、東京都で一人のアフリカ人女性(20代)がシェルターに保護された。女性は母国で望まない結婚と性器切除を強要され、なんとかビザが下りた日本にバックパック一つで逃れてきたという。しかし、母国と日本の物価は、文字通りケタが違う。所持金は数日で底をつき、ホームレス状態に。女性の保護から4日後、東京を季節はずれの豪雨が襲った。アフリカ出身の彼女がまだ路上にいたら、真冬の雨はどんなにこたえたことだろう。

 やっとの思いで迫害を逃れたのに、雨を遮る傘もない。これが日本にいる難民の現実だ。なぜか。正確には彼女は、日本社会では「難民」とは認められていないからだ。

 14年の1年間で、争いや迫害で国を追われた難民・国内避難民は世界で5950万人にのぼり、過去最多を記録した。世界人口の122人に1人が難民という異常事態だ。

 日本でもネパールやミャンマー、トルコなど73カ国から逃れてきた5千人が難民認定を申請した。これも過去最高の数だが、日本が難民として「認定」したのは、わずかに11人。認定率は0.2%で、世界平均の100分の1にも満たない。

 400万人以上にまで急増したシリア難民については、国連が世界各国に受け入れを要請しているが、約60人の申請者のうち日本が認定したのは3人のみ。島国という立地、鎖国という歴史のなごりなのか、日本の難民支援は、世界各国と比べても大きく遅れている。

 問題とされているのが、難民認定申請の煩雑な手続きとそれに要する期間の長さだ。審査には平均3年、長い場合は5年。その間の生活は困窮を極める。

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