就労が認められるのは申請から6カ月が経過してからで、それまでの命綱となるのが生活保護の3分の2程度の金額を外務省が支給する「保護費」だ。しかし、その受給にも審査があり、15年3月時点の受給者は160人。認定から支給されるまでに、さらに2~3カ月を要するため、冒頭の女性のように、来日直後にホームレスになってしまうケースも多い。

 難民申請から生活全般のサポートを行う難民支援協会の大きな課題は「凍死者を出さずに冬を乗り切る」ことだ。越冬支援として寝袋や防寒着、温かい食事を提供している。極寒のバルカン半島ではない。私たちが暮らす、東京の路上での話だ。

 国際社会の批判の対象となっているのは、迫害の立証責任を難民本人に“負わせ過ぎて”いることだ。難民申請書類は計12枚だが、迫害の証拠となるような報道、人権リポート、虐待の傷の写真などを追加資料として添付できる。難民支援協会代表理事の石川えりさんは、難民認定された人は追加資料を600枚以上提出していることが多いという。迫害の資料がないことも多く、リサーチに時間がかかるうえ、全て日本語に翻訳しなければならない。そのための多額の費用は、難民が負担しなければならないのだ。

 こうして提出された書類を審査し難民認定を行うのは、入国管理局だ。しかし、問題がある外国人の「送還」を基本業務とする組織が、「受け入れ」のための認定を行うこと自体、矛盾をはらんでいるとする有識者は多い。事実、取るものも取りあえず国を逃れ、偽造パスポートで入国することも多い難民が、収容・送還されそうになるケースも発生している。

AERA  2016年1月11日号より抜粋